俺たちが子どもでいられたあの夏の日 IV【BANANA FISH】 (ページ39)

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「つーわけだから、あんまり無理に誘ってやるなよ。あいつも、克服しないとってわかってるんだろうけど、まあ経験のせいだな…そう簡単には、克服できない」

信号で車を停めてチラリと見ると、先ほどの拗ねた顔から何かを考え込むような顔になっていた
まぁ、俺が言えることはただ一つだけ

「根気強く誘ってやってくれよ。アイツもお前らに誘ってもらうのはまんざらでもねえみたいだしな」

「………」

(まぁ、今はそんなこと言ってる場合じゃねぇんだろうけど)

今頃、昭輝が持ってきた資料や仕事に血反吐吐きながらバリバリやってるんだろうな…

叶兎side

『だっは…終わった〜…エナジードリンク…』

ドサリと畳の上に倒れてビニール袋に何本も入っているのを手に取り、未開封のものをそのまま寝転がりながら飲み、タブレットをスイスイと指で動かす

飲み終えたビンを空箱に投げ捨ててタブレットを持ってゴロリと寝転がり、ニュース項目を見ると、王龍が殺害されたと言うニュースが飛び込んできた

極右過激派グループからの犯行声明が送り付けられているとのことがあり、人種問題の絡むテロの可能性とあるが、どうせあの月龍が仕組んだんだろう

次期総裁は、華龍がなるかもしれないこと、相談役として月龍が就任するということ

『あ"ー…めんっどくせ』

潰しておくか、華僑

タブレットのとある画面を開いて俺が指を1回押すだけで全世界が華僑を攻め込んでいく
それをしないのは、単にめんどくさいから

俺は起き上がってタンスから服を取り出して着替えてサングラスと帽子を身につけて屋敷を後にした
もちろん、昭輝には行き先を伝えた

アイリッシュパブに来るのは多分1年振りぐらい
俺はそんなことを気にも止めずにに酒を片手に持ちきりであるニュースを一瞥して煽る

「坊ちゃん」

『ん』

由嘉に呼ばれて席を立ち、店の裏を使わせてもらう
俺の顔を知っている店主は快く貸してくれた

『はい』

「これは？」

『バナナフィッシュの薬学的正体を推理してみたんだよ。精神薬理学の専門家に意見を聞いてみてくれよ』

「推理したって…キミが？」

『あれは純粋に化学合成されたものじゃねぇよ』