俺たちが子どもでいられたあの夏の日 IV【BANANA FISH】 (ページ36)

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「大丈夫か？」

『お前こそ、大丈夫か？ってか、なんでここに？』

「…いいだろ、別に」

『その格好…さてはお前、ここの患者だな？
なるほど、怪我のおかげでここに運び込まれたわけか』

「…そうだよ」

むっとしたアッシュに『無事で何よりだ』と撫でる

「叶兎も、無事でよかった」

『ん…お前もな』

猫のように擦り寄ってくるアッシュを撫でると、「キスしていい？」と聞いてくる
お前、性的なことは嫌いなんじゃなかったか？

『ここから無事に逃げお失せたら考えてやるよ』

「あ、おい！」

『今の俺は警備員なんでね。外に出たら、お前を捕まえる側になっちゃう』

「捕まったらなにかされちゃうの？」

『俺にセックスされる』

「是非とも捕まりたい…」

『何言ってんだよ、馬鹿かお前は』

何をそんなに望んでやがる

『じゃあな、子猫ちゃん』

パタンと外に出て俺はすぐさま自分の脱出を考える
アッシュのことだからどうせ自分でどうにかするだろう

(チョロい…チョロすぎる)

ものの10分程度でセンターの外に出てしまった
流石のチョロさに頭を抱えてしまう

最新の警備システムで守られてるんじゃなかったのかよ…

(外に出たはいいが、どうやって出るか…)

キョロキョロと視線を動かしていると、警備員が慌てた様子で駆け込んでいき守衛室はガランとした
警備態勢に穴がある

『あーあ、こんなことするから…俺に逃げられちまうんだよ』

そのまま入口を素通りしてカードキーを放り投げて夜の街へと駆けた

『ニュージャージーとか聞いてねえよ!!』

ぜぇはぁっと息を吐きながらニューヨークへと戻る
なんでこんなに俺が疲れるんだよ…何もしてねぇってのに…

なんとか自分の屋敷近くに戻ってくると、ドンドンと引き戸を叩くと、「誰だ？」と声が聞こえてくる

『頼む、開けてくれ…俺だ』

「叶兎!?」

ガラリと開いたドアからは直斗が飛び出して来て「おまっ、どこに！」と聞いてきて『こ、国立衛生精神センターだ』と答えながら中に入った

「なんでそんなところに…」

『バナナフィッシュの実験台にされそうになったんだ』

「はあ!?」