38-2 ページ21
トン、と静かに閉めると「なんだよ、まだ用があるのか」とアッシュがめんどくさそうに言うので『あぁ、あるよ』と帽子を取って微笑めば、アッシュは目をこれでもかと見開いていた
『Hi、アッシュ。元気だった？』
「叶兎…なんで」
『お前がここに運ばれた日から張ってたんだよ。苦労したんだぜ？なかなか警備が手薄にならねぇから、部下使って人払いしてよ』
ベッドの上に座って足を組むと「来てくれてたのか？」と少し明るい弾んだ声が聞こえてくる
アッシュの方を見て『もちろん』と金髪を優しく撫でる
『オーサーとの決着をつけたって聞いて、大怪我したって聞いて、まさかここまで仰々しくなるとは思わなかったけど』
「…………」
『まぁ、お前がハロウィンにそんな大騒動を起こしてくれたおかげで、俺の計画がオジャンになったわけだが』
「計画？」
『奥村くんを日本に帰す作戦。それと、お前を日本に強制的に連れていく作戦』
「え…」
『クソジジイどもが帰ってくるんだ。もうすぐ』
「！」
俺の言葉にアッシュは目を見開く
俺はそんなアッシュから目を逸らして自分の拳を見る
『なんとかして足止めをしたいところなんだ。お前が退院するまで…退院したらまたお前や奥村くんにはあのマンションにいてもらうことになるんだけどな…』
「叶兎、俺は」
『大丈夫。お前や奥村くんが安全に過ごせるようにできる限りのことはするよ』
ポンポンとアッシュのふわふわとした髪の毛を撫でる
白い肌に触れて怪我がないのを確かめ、俺はコツンと額をくっつける
『大丈夫、何があってもお前らを守るよ』
「叶兎…」
『とりあえず、それまで全力で生きてろよ。あと、今は怪我を治すことに専念しろ』
「…なあ」
『ん？』
パッと手を離した俺に名残惜しいという表情で見つめてくるアッシュに振り返る
「お前は絶対、死ぬなよ」
『…あぁ』
懇願するような眼差しと声色で言われてしまっては、とてもではないが答えないわけにはいかないと思った
答えたのと同時に俺のスマホがバイブする
もうそろそろ警官が戻ってくるらしい
俺はベッドから飛び降りるようにして降りて『んじゃ、そろそろ行くよ』とドアの方に歩いていく
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 46人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2022年7月10日 18時
