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『どうした?』
アッシュに目を向けずにパソコンの画面を見て指を動かしていると、俺の背中に小さくもたれて息を吐いている
特に何かをするわけでもなく、何かを話すわけでもなく、ただ落ち着くために息をしている
「…英二が、今の俺は俺じゃないって」
『うん』
「…図星だった」
『最近のストリートギャングの対立は、お前がしてるんだろ?オーサーと決着つけるのか?』
「…あぁ」
『そっか』
エンターキーを押して送信ボタンを押し、俺はパソコンの画面から俺にもたれるアッシュを一瞥した
「…軽蔑する?」
『しないよ。お前がやらなくちゃいけないって思ってやってるんだろ?それを俺が止めることはできない
俺がしてることをお前が止めれるか?』
「…無理」
『だろ?』
わしゃわしゃと犬を撫でるような撫で方でアッシュの髪の毛を撫でる
『お前がどうしようとそれはお前の勝手だよ。俺は何も言わないし止めない
けど、自分を犠牲にしてでも何かをするっていうんなら、俺が止める』
「………」
パッと俺の背中から離れたアッシュに顔を向けることなく立ち上がる
『もう今日はここで寝ちまえよ』
「お前は…」
『まだやることあるからな。気にせず寝ちまえ』
敷かれている布団を指差して襖を開けて出て行こうとすると手首を掴まれてズンズンと布団の方に連れ込まれた
『お、いっ!』
ドサリと寝転がった俺の横にアッシュも同じように寝転がり、抱きついてくる
胸に顔を埋めて眠ろうとしているアッシュに、小さく息を吐いてポンポンと撫でる
『はいはい、おやすみ』
「ガキ扱いすんな」
鼻声の声にくつくつ笑いながら『はいはい…おやすみ』と抱きしめて優しく撫でる
しばらくしてから規則正しい寝息が聞こえてきてそのまま布団をかけてやる
『……………忘れられない、か…』
ふわふわの髪の毛を撫でる
忘れられない思い出もある
誰も思い出には勝てない
過去も過ちも
消えてはくれない
それでもこいつは
『…………………』
いや、よそう
無駄な考えを脳から放り出すために目を閉じた
誰も俺を愛してくれるなんてこと、あり得ない
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作者名:サッカーバカ | 作成日時:2022年7月10日 18時