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「パパ！」
「…なんだ騒々しい」
「たった今、ニューヨーク証券取引所から我が社の、ウェブスター・エコム産業の株が、今朝の寄り付きから大暴落していると」
「…なにぃ？」
『大したことじゃない。主な証券会社に偽の裏注文を出しただけさ。それも、大量にな』
「パパ、大変です！」
「今度は何だ！」
「GOOSEのプール金が、海外の口座に全額送金され、全てなくなっています」
『タックスヘイブンの国々に、ディノ・ゴルツィネの所属するコルシカ財団が持つ、５つの会社がある』
サラサラと世界地図を描いた紙を取り出し、図上にぐるっと円を描き、バツ印をつけながら説明を加えていく
『それぞれの頭文字を取って、GOOSEという。だがこれらは実際には存在しない。利益を分散し、租税を誤魔化す財団は、こんなペーパーカンパニーをいくつも持っていて、GOOSEはその中でも最大規模のものだ』
ポトン、ポトン、と水を落としていくと地図の上で滲み広がっていく
『粗利益はざっと9000万ドル。そいつをそっくり頂いたのさ』
「誰かが外部からアクセスを」
「馬鹿な、ハッキングなど不可能だ！」
「そ、それが…パパ・ディノご自身のIDが使用されたようでして」
「なんだと？それはわしにしか使えんはず…」
『奴の寝室へ自由に出入りできるのは、お気に入りのペットだけ。そして、私が奴と交わした契約は？』
「キミの頭脳を提供する代わりに、奥村英二とショーター・ウォンの安全の保証…まさか！」
『私は頭を提供した。だが、ハッキングするなという契約もPCにスパイウェアを仕込むなとも言われていない。ようは言葉のあやと言葉の受け取り方さ。契約を交わすのなら、そう言うことを含めた上で契約書を用意する。口約束なんて破ることはわかってる。だから私が先に破った。合理的でいいだろ？』
軽く微笑み、翡翠からブルーの瞳に変えた自分の瞳をじっと見て汗を滲ませる烏間さんは、「全く、キミは…」と生唾を飲み込んでいる
『いただいた金は、もともとブラックマネーだ』
「つまり、ゴルツィネは多大な損害を財団に与えたことになり、釈明のためマフィアのテーブルにつかざるを得なくなるというわけか…」
『ビンゴ』
「…キミは、本当に…」
『いい教え子になっただろ？』
「舌を巻くよ、全く…」
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作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2022年1月2日 9時
