27話 脱走 ページ34
ゴルツィネがアッシュたちと食事をしているということは、ゴルツィネの部下から得た情報だった
と言っても聞き耳を立てて廊下を歩いている奴らの声を拾ったというわけだ
「海斗」
『ん？』
「いいのか？このまま、進んで」
『あぁ、明日になれば全てが終わる』
「…………なら、いいけど」
日が沈みきり夜になった
人の気配もまばらになり始め、静まり返った頃にショーターも眠りについた
窓辺の月明かりで照らされた部屋を見た後、ドアに付けられている電子ロックに歩みより、持っていたハッキングのできるUSBメモリを差し込みロックを解除し新たなパスコードでロックをかける
気配を消して闇に同化し、アッシュたちのいるであろう場所に向かうと両腕を鎖で繋がれて気絶しているアッシュがいた
もちろん、伊部さんとマックスもいる
『アッシュ、アッシュ』
「ぅ…っ」
(息は、あるな…結構やられたのか)
全身ボロボロのアッシュの頬を叩き呼びかけると呻きながら瞳を開け始めた。グリーンの瞳が私を捉えると「海斗…？」と呟きハッとし「海斗！」と声を荒げる
『静かにしろ、バカ』
「海斗、お前……無事だったのか」
『安心しろ。私も英二も、ショーターも無事だ』
「そう、か…よかった」
『お前は、無事とは言い難いな』
「…まぁな」
『待ってろ。手当してやっから』
「………」
包帯と消毒とガーゼにテープを取り出し、傷に消毒をかけていくと「英二たちは？」と聞いてくるのに『安全な場所にいるよ。ゴルツィネと取引をしたからな』と言うと「なに？」と声を少し上げた
『安全を保証するなら、という条件でな』
「お前…」
『で？狐の意味はわかったか？』
「遠回しなんだよ…」
『月龍がいたからな〜。下手なこと言えなかったんだよ』
「…ショーターのこと、お前が？」
『あぁ。月龍に薬を盛られかけたけど、何とか回避してショーターと手を組んでな。敵の懐に入るためにお前らを騙したんだ。悪いな』
「敵を騙すにはまず味方からってか？チッ」
『そーいうこと。ここから逃げたらいろいろと説明してやるよ』
「どういうことだ？」
『この屋敷にいる人間が、偽物だってことをな』
「…は？」
間抜けな声を出したアッシュに『んじゃ、休める時には休めよ』とだけ言って部屋を出て英二たちのいる部屋に静かに戻った
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 65人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2022年1月2日 9時
