23話 立場と違い ページ23
「そんな…だって姉さん！好きにしろって！」
『危険度が上がったんだ。これ以上お前がここにいても何もできない。わかってるんだろ？』
言い返してぐっと押し黙った英二は「…そう言われたら、返す言葉がないのわかってるくせに」と夕陽に染まる空を見上げていた
「たしかに僕は、姉さんのように自分で自分の身を守れないし…姉さんやアッシュの足を引っ張ってばっかりだった」
『そんなことないよ。英二はアッシュとスキップを助けた』
「でも、あれは！」
『子どもの頃、初めてだった』
「え？」
『人に、助けてもらったのが…英二が初めてだった
父さんを亡くしてまだわかってない私に、拙い言葉で“大丈夫”だと、“僕がいる”と言ってくれたお前に、あの時どれほど救われたか…』
「姉さん…」
『クソみたいな人生だったのが、たったあの言葉だけで自分を保ってここまでくることができた
お前はいつだって人を助けれるんだ。アッシュだってわかってる。わかってるから、日本に帰そうとしてた』
「…………」
『彼が銃を持ち、腕を磨くようになったのはそうしないと生きていけなかったからだ
私だってそうさ。銃とナイフの扱いを教わったのはそうしないといけなかったからだ
銃もナイフも持たずに生きていけるなら、それに越したことはない…そのせいで知りたくもないものに出会うこともない』
自分の中にある才能の開花には驚きもしたし納得もした
自分の中に芽生え燻っていたソレが、ソレであることに
『英二とアッシュとじゃ、アッシュと私とじゃ、私と英二とじゃ、住む世界が違いすぎる』
「……わかってる。わかってるよ、姉さん。理解してる…でも、僕はなんのためにここまで」
『…なにもかもが、無駄だったわけじゃない。英二がここまできて、あの時グリフィンを助けてくれたことに大きな意味がある。そのおかげで、あいつの宝物は失われずに済んだ。何も今すぐに答えを出せとは言わない
自分が納得できるまで考えればいい…気持ちの整理をする時間は沢山ある。考えて自分が納得できる答えを出せ』
「………うん、わかった」
手すりにもたれてこちらに背を向ける英二に『最後に言っておく』と夕陽に照らされている黒髪に向き直る
『私は、英二が大好きだよ』
大好きだから、大事だから、守りたいんだよ
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作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2022年1月2日 9時
