同志の思いを胸に【BANANA FISH】 (ページ20)

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タプ、タプタプ、タプ、という指が画面を弾く音だけが響く中、パタンというドアの開閉音に集中が削がれた
気配と空気からして、朝から調べに出てくれたショーターだろう

重たい腰を浮かして出迎えようと玄関に向かうと、神妙な面持ちで入ってきたショーターがいた

『ショーター』

「っ！お、おう、海斗か」

『なにかあったか？』

腕を組み壁に肩を預けて聞くと、ショーターは「あ、いや…」と視線を切らした
サングラスをしているせいでどこを見ているのかわからないが、それでも彼の意識が“揺れた”のは視認できる

『………テラスで話そうか。今日は天気がいいんだ』

「え？あ、あぁ…」

『何か飲むものは？』

「え？あ、じゃあコーラ」

『OK。先に行ってろ』

キッチンに入り、グラスを取り出して中にコーラを注ぎ込みそれを持ってテラスへ向かうとカウチに座って、思い詰めたような顔をしているショーターの前にコーラの入ったグラスを置いた

「サンキュー」

『ん』

向かい側にコーラを置き、テラスの柵に体を預けた

「ユーシスだけどな、別に不審なところはなかったぜ」

『…………』

サングラスに隠れてショーターの思い詰めた瞳が見えないがよくわかる。“揺れている”のだ

『李王龍』

「!?」

『やっぱり、仕掛けてきた？』

「なん、で…それを」

『お前が帰ってきた時、いつもの優しい空気がピリついてたから』

「！」

『人の顔色を伺う人生を歩いてたんだ。伊達にお前ら以上の人生歩いてるわけじゃねぇよ
お前が思い詰めてるってことは、大体は…姉貴絡みだろ』

「!!」

『当たりか。で、姉貴を出されてスパイの真似事を協力させられた…違うか？』

指をさしながら聞くと、ショーターは唇を噛み下を向き無言になった。それは肯定としていいのかと思い、そう捉えることにした

『皮肉なもんだな…。尊敬してた奴があっさり掌返して裏切るなんてな』

こいつが信頼して頼ったはずの華僑はゴルツィネについたということだ
やはり、予感が的中している。この調子だと、嫌なことも始まるな…

「………海斗」

『あん？』

「……………俺は、どうすればいい」

『…………………お前はどうしたい』

「……………アッシュを、裏切りたくねえ」

『………』

葛藤の中、彼の口から出たのは親友との手を切りたくないということ