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俺は、今まで衛生的なことは考えたことがなかった
飯があるなら、なんでもいい。腐ってようが、虫が食ってようが、腹にはいりゃなんでもよかった
カビたパンをできるだけ削っていたけど、面倒になってきてそのまま齧り付くようになった
最初は下痢や熱を出していたけど、体とは不思議なもので何度も繰り返すたびに抵抗もなくなった
カビたパンと、腐ったスープと時々あるみずみずしいとはいかないギリギリのりんご
りんごがくるだけで飛び上がるほど嬉しそうに食う奴らを見て、俺の分まであげた時もあった
温かい飯なんて食べたことなかった
ましてや、自分のために作られた飯なんてもってのほかだった
だけど、一度だけ
一度だけあったんだ
“今日を、私とアレンのお誕生日にしましょう”
あの日食べた温かいスープは、いつまでも忘れない
美味しかった。何が入ってるのかと聞くと、「自分で考えてごらんなさい」と言われた
考えてもその答えが出ることはなかった
俺は飯への執着はある。ただ食えればなんだってよかった
腐ってようがなんであろうが、腹に入れば食えれば、なんでもよかった
それは今もこれからも変わることない事実だ
なのに
なのに、今…俺は
「ショーターの飯が不味すぎて、英二の飯食って泣いてるよ」
「ひっでぇ…流石に傷つくぜ？」
「アレン、大丈夫かい？」
食いたいのに、涙が止まらない
あの日食べた温かいスープの味と同じなんだ。なんでなんだろう。食べたものは違うのに、優しい味がする
『…………英二は、不思議だ…』
「え？」
『…………優しい味がする』
ショーターの飯も、英二の飯も、あの時食べた飯も、みんな優しい味がするんだ
なんでなんだろう。不思議だ。不思議なのに、不思議で仕方ないのに
「そりゃあ、真心込めて作ってるからね！」
『………………ま、ご、ころ？』
「そうさ！美味しくなれ、美味しくなれって思いながらご飯を作るんだよ。食べてもらう人の顔を思いながらね
美味しいって言ってもらえるように」
“美味しくなーれ、美味しくなーれ！”
“うんめぇーっ！”
“リベル、何入ってんだ？このスープに！”
“教えないわよ”
“えー…”
“リベル、おかわり！”
“はいはい”
『……まご、ころ…』
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作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2021年12月5日 12時
