大王女様と山猫小僧10 (ページ48)

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92話絶望の時間ページ48

ー翌日ー

『あーあ、今日で21になるんだ…』

目が覚めて一夜明けた今日、奇しくも今日は私のお誕生日。8月20日だった
神様もなんてことをしてくれるんだ。誕生日に酷いことしてさあ〜

『っていうか、アッシュってなんで私につきっきりなんだろう…』

あんなにイケメンなら、磯貝みたいに女の子からモテまくってるだろうし…
つーか、なんであんなイケメンが私のそばにいるのか意味がわからない

『…あーあ、彼氏欲しい』

パタパタと手をバタつかせていると、窓の外を見るとアッシュがいた
赤いジャケットで金色の髪の毛だからすぐにわかる

『気分転換に行ってみよう』

カコン、カコンと松葉杖をついながら病室を後にしてエレベーターを使って下まで行く
病院の中庭に向かってカコンカコンと松葉杖をついて進んでいくと、アッシュがいるのが見えた

あれ、傍に誰かいる…誰だろうあの人

「アッシュ…大丈夫か？」

「俺なら大丈夫さ。それより、早く瑞姫の病室に行きたいんだ」

「……いつ、伝えるつもりだ？」

「…………」

「あいつはバレーボールを愛してる。愛してるが故に早く知らせてやらないと」

「うるせえな、わかってるよ…近くで見てきたんだ…あいつのバレーボールに対する気持ちも、愛も…けど…ッ」

「アッシュ、目を逸らしてはいけないことは知ってるだろ！いつか知ることになるんだ！瑞姫は…あいつは、もう二度とバレーボールができなくなったことを知ることになるんだぞ!!」

ｶﾞﾀｰｰｰｰﾝｯｯｯ

「…！」

「えっ…」

「あっ…………瑞姫…お前、まさか…今の話、聞いて…！」

今…なんて言ったの？

早口の英語だったから聞き取れなかっただけ？それとも私の耳がおかしいだけ？

今、バレーボールできないって

「白樺さん？どうした、こんなところで…」

誰が？

後ろから声をかけてくる烏間さんよりも、目の前にいるアッシュにヨタヨタと近づく

『私…二度と、バレーボールできないの？』

「それは…っ」

『…ねえ、私…バレーボールで…世界に行けないの？』

「…っ…」

駆け寄ってきたアッシュに泣きながら抱きついた