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90-3 ページ41

ー病院ー








手術室の前で俺は止められて、赤いランプがついたのを見て近くにあった椅子に座り込んだ
震える手で英二やシン、マックスに連絡を入れて病院にいることを伝えればすぐに来た









「アッシュ!」

「アッシュ、大丈夫か?」

「俺はなんともない…でも、瑞姫が…また、俺を庇って…」

「また…?またって、アッシュ、お前記憶が!」









アイツが俺を突き飛ばしたのが、重なったんだ
倉庫の部屋で、俺に日本語を教えてくれた瑞姫が、『危ない』と叫んで俺を突き飛ばした光景が









「俺をまた、二度目だ…これで、二度目だ…俺を庇ったんだ…」

「そ、んな…」









ガクッと膝をついたのは、シンだった









アイツは最後、俺を庇った時どんな顔をしてた?泣いてたか?怒ってたか?









“アッシュ…大好き”









笑ってた…満面の笑みで、笑ってたんだ









「なんで、俺…アイツの記憶を失ってたんだろう…」

「アッシュ…」

「失くしちゃいけない、ものだったのに…」









ハラハラと落ちていく涙を放って、瑞姫からもらったバースデーカードを見る
血で濡れたバースデーカードを胸に抱くようにする






アイツは一体、どんな気持ちで俺に誕生日プレゼントを選んだ?
俺に突き放されて、傷ついて、それでも俺のためにプレゼントを用意した





どれだけ、辛かったんだ?









「瑞姫…頼む…死なないでくれ……」

「アッシュ…大丈夫さ…白樺さんは、きっと、きっと大丈夫!」









涙を流してその場に崩れた俺を英二が慰めてくれる
その目には涙が浮かんでいて、俺は縋るように英二を抱きしめた








瑞姫、瑞姫…死ぬな






俺はまだお前に、何もしてやれてない









泣き続けて落ち着いた頃、フッと手術室のランプが消えた
手術室から外科医が出てくると、俺はいてもたってもいられずに「先生!」と駆け寄った









「瑞姫は、瑞姫は!?」

「幸い、命に別状はありませんよ。ただ、絶対安静ですので入院の準備をしておいでください」

「あの、そばには…」

「お一人だけでしたら…大丈夫ですよ」

「アッシュ、そばにいてやれ…」

「えっ…」

「瑞姫は、お前が入院した時片時も離れなかったんだ…今度は、お前がそばにいる番だ」









マックスに言われて、俺は静かに頷いた

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作者名:サッカーバカ | 作成日時:2021年8月30日 11時

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