大王女様と山猫小僧10 (ページ31)

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『柳生っち、そろそろ行こう』

「え？あ、うん…大将、会計！」

「おー」

財布を取り出して自分の分を出して柳生っちと店を出る

『柳生っち』

「？」

『私、決めた！』

「え？」

『ヴァニタス、行くよ』

「！ホント!?」

『うん。今決めた』

アッシュを想うのなら

あの日、あの時

“お前らも持ってみるか？”

あの時、あの日、出逢わなければよかった

あの時、あなたに出逢わなければよかった

あの日、あなたに出逢わなければよかった

いくつもの奇跡と偶然が重なって出会ったあなたと

本当は離れたくない、私のことを思い出して欲しい、そばにいて欲しい

アッシュのそばにいたい、ずっと隣に立ちたい、笑いたい

でもダメなんだ

私がアッシュの憎むべき対象である限り私はアッシュの隣にも友達にもいることはできない

中途半端に気遣ってくれることもしないで欲しい

憎んでいるのなら、いっそのことあの時殺してくれればよかった
その方がよかった…

だから、本当にお別れを言いに行かなきゃいけないんだろう

でもそれは、私本人が彼らの前で言うべきなのか、まだわからない

「じゃあ、またね！」

『うん、またね』

ブンブン手を振って走っていく柳生っちを見送り、私は上を見上げる
ニューズウィークの事務所、マックスがいる仕事場だ

マックス・ロボに会いたいと伝えれば、マックス本人はすぐにきてくれた
ロビーで私を見つけると「瑞姫ー！」と嬉しそうにこちらにやってくる

「どうした、元気にしてたか？」

『まあね』

「アッシュとの生活はどうだ？アイツ、またお前に」

『アパートのことなら、私は帰ってないよ』

「な、なんだって？」

『アパートから出ていったの。もちろん、私の意思で、アッシュの意思でね』

「…どういうことだ…お前が……アッシュか？アッシュが言ったのか？出て行けって、そうだな!?」

『それでね、マックス。今日はマックスにお願いがあってきたんだ』

「…？」

マックスは私がお願いにきたことに頷き、向かいの椅子に座って話を聞いてくれる
お人好しだよ、マックス

『私、イタリアのバレーチームのヴァニタスからスカウトが来たんだ』

「なにぃっ!?」