大王女様と山猫小僧10 (ページ29)

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「じゃあ、美味しい定食屋さんにしよう！ほら！」

『ちょっ!?』

柳生立ちに手を引かれて走っていく
街並みの中を歩いて行けば、そこは見知らぬようで知っている街並み

私が知っているのは、常に命の危険と隣り合わせの街並みで、こうやって平然と楽しく歩いていけるような街並みじゃない

アッシュやオックン、ショーターと一緒に歩いた街並みじゃない
気をつけろと、1人になるなと言われたような場所とは思えない

アッシュと一緒に行ったドーナツ屋さんを通り過ぎて、私が服を買った店を通って、一緒にみんなで歩いた街並みを柳生っちと歩いて…

(寂しい…)

ここにアッシュがいないことも、辛くて寂しくて、隣にいる柳生っちがアッシュに見えてしまいそうで怖くて…私、ホント最低だ

「ここだよ！ここの定食屋さん、すっごく美味しいんだよ！」

『へぇ〜』

「すいませーん！」

ニッコニコで中に入っていった柳生っちは、「大将！2人ね！」とVサインを作っている
後を追いかけて中に入ると、見知った顔がいた

『……………』

「なっ…瑞姫!?」

『アレックスたちだあ…しかも、オックンたちまで…』

「えっ、白樺さん…知り合いなの？」

『友達です…全員』

「え、まじで？」

柳生っちがアレックス、ボーンズ、コング、シン、オックン、アッシュを見て目を瞬かせると「あ、初めましてっ」と慌てて頭を下げた

「俺、柳生毅って言います！男子バレーしてます！」

「あ、あぁ…」

『柳生っち、そんな大きい声出さなくていいから…』

「あっ、あはは…」

2人がけの席に座っていると、お冷を持ってきてもらいメニューを広げる
柳生っちは、「俺いつもの唐揚げ定食」と自分の分をさっさと決めてしまっている

『あーーー…柳生っち！おすすめは!!』

「おすすめは天むす定食」

『すいませーん！唐揚げ定食と天むす定食お願いしまーす！』

「あいよー」

「ここの定食屋さん、日本人が大将だから俺すっごく好きなんだ〜」

『へぇ…』

お冷を飲み、柳生っちはこれまでのヴァニタスでの練習や他のみんなのことを教えてくれた
やがて持ってきてもらった定食を口にする

「そういえば、白樺さんはどうするの？ヴァニタスへの移籍」

『………………』

(移籍…？)