大王女様と山猫小僧10 (ページ3)

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簡単な確認をした後、ダイニングに戻ると「こんなもんか？」と聞いてきたシンに『うん』と火を止めて鍋の準備を始める

みんながダイニングからリビングに移動していき、鍋を食べ進める中、私はと言うとダイニングに残って野菜を包丁でぶつ切りにする

カットした野菜を持ってリビングに戻り、継ぎ足していくと「なあ、瑞姫」とシンが鍋物を食べながら聞いてきた

『んー？』

「ビーチバレーの練習どうだ？」

『あれはバレーという名の違うスポーツだよ』

「え、そうなのか？」

『足場は不安定、風でボールは流れる、意外と飛び込めない…風でボールが流れて思うようにできなかったり…足取られて下手なことして、笑われたり…』

「大変だな…」

『んー、まあ…』

皿に盛った鍋を口の中に含みもぐもぐと食べる
ビーチバレーでは、いくらセッターの手応えがいいトスであってもスパイカーが打ち辛いと意味がない

スパイカーのレシーブの後の体勢を考慮した高さ、相手ブロックが見えるように程よいネットとの距離、風も含めて…全部考える

『でも、“次”を考えるのは楽しいよ
“上”を目指す以上、苦しいことの方が多い…私の英語が通じるかわかんないし、いろんな言語が混ざることだってあってわかんない時があるのと同じで、バレーボールは苦難の連続
苦しくなくちゃ頑張ったことにならないって、思い込んでるみたいなとこもあった…実際そうだった』

皿をおき、箸を置き、自分の両手を見る
ボールをあげるたびに、スパイカーがそのボールを打つたびに、点を取るたびにこの手は勝利の味を占めていた

『でも、そんなことはお構いなしに時々楽しいはきてしまう、楽しいが私を引っ張ってしまう
できたことが嬉しいからこそ、できると次も信じて上を目指す
そしてバレーボールは楽しいと、忘れては思い出す』

「「……」」

『バレーボールは、ボールを落としてはいけないし持ってもいけない
繋ぐ球技。仲間はたった1人、バレーボールの根幹を今もう一度…思い知らされる』

バレーボールとは、苦しくも楽しいものだ
たった一つのボールに全員が食らい付いて落とさないようにあげて、繋げていくスポーツ

そんなスポーツの大切さや根幹を、バレーボールをして何度も思い知らされる…