大王女様と山猫小僧10 (ページ19)

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「やれるもんなら、やってみろよ…自殺すればいい」

『………………』

ズキッと突き刺すその言葉に胸が痛む
心臓が抉られたような衝撃が走り、スーツケースを握る手が少し緩むも、気をしっかり保つために握り直す

『いいよ、死んであげる。銃、貸してよ』

「………………」

アッシュが腰から銃を出して床を滑らせてきた
足元でくるとそれを拾い上げる。そうそう、これこれ…これでショーターを撃ってた

迷うことなくセーフティーのロックを外し、引き金に指をかけてそのままこめかみに向けようか迷ったけど、心臓を撃たれて死んだショーターを思い出す

銃口を心臓に向けて引き金を引くために指に力を込めた

(ショーター、今からそっちにいくよ)

ｶﾁｬｯ

小さな音…だけど、あの腹に響くような重苦しい音は部屋に響かない
というよりも、何度引き金を引いても飛び出してこない銃弾

『…自分で弾を入れればよかった？』

6発とも装填されていない銃をアッシュに向けて滑らせれば、「ふざけんなよ…なんでっ」と歯を噛み締めながらこちらに歩いてくる

「なんで俺の言葉を真に受けて…！」

『死んでみろって言ったのは、アッシュでしょ？
私はアッシュに言われたらなんでもするよ。死ねと言うなら死ぬし、出て行けと言うなら出て行く…』

「っ！」

アッシュは顔を歪めて「なんで…お前が、あれ…」とよろよろと私から離れて行く

「なあ、待ってくれ…なんで、待ってくれ…違う、やめてくれ…なんで俺の代わりに、頭を撃ち抜こうとしてるんだよ…」

『……………………今の光景となにかを重ねてしまったのなら、そのなにかは思い出さなくていいよ』

きっと、呼び出されて埠頭の倉庫でのやりとりだろう
断片的に出てきた光景にアッシュが頭を抱える必要はない。いらない記憶なのだろうからね

「お前は、俺になにをされてもいいと言ったよな…なんでもすると…なら、俺と寝ろって言ったら寝るのか？」

『…！』

「俺になにされても、お前は…いいのかよ」

冷たく光り始めた翡翠の瞳が私を捉えて離さない
やばい、警戒心が途切れていた今、警報が頭の中で鳴り響いた