大王女様と山猫小僧8 (ページ48)

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ブランカは白樺瑞姫の才能を買っていた
暗殺者としての技量は誰かとペアにならなければ力は発揮されないが、バレーの才能ならば1人でも発揮できる

バレーボールの才能とセンスは誰にも劣ることはなく、世界を相手にしても通用していく実力はあるとブランカはわかっていた

そして、このアメリカで再び再会することができた

3年ぶりに会った彼女は変わっていた

あの時のような幼さは残っておらず、すっかりと成長したバレーボーラーだった
しっかりとした体格も、強い眼差しも何一つ変わらない

変わったとすれば、彼女の隣を歩く人間が現れたことだろう
いつまでも幼馴染と隣を歩きひたすらにバレーに打ち込んでいた彼女に、愛した人間が現れたのだ

自分の愛弟子が人を愛し、守ろうとしたように
彼女にもできたのだ。人を愛し、守ろうとしたい人間が

たとえ暗殺の才能がなくとも、戦えなくとも、彼女は自分の持てる全てを使って彼を守り抜いた
そして、今は床に伏せ、戦っている

ー翌日ー

与えられた部屋で身支度をしていると、「どこへ行くの？」と酒が切れた月龍が声をかけてきた

「契約を、終了させていただきと思いまして」

「アッシュのところへ行くつもりだろう？」

「……今度ばかりはあいつに勝算はない
傷を負った身で、罠に飛び込もうというのですからね」

「だからあなたも私情で行動するってわけ？あなたにもそんな感情あったの？」

「あいつのセリフじゃないが、自分の役を演じるのに少し嫌気が差したんですよ」

「行かせないと言ったら？」

「…月龍様。あなたは人を憎むことだけ覚えて、愛することを学ぶことができなかったのですね
かつての私もそうでした」

ブランカは身支度の手を止め、月龍に向き直った

「私の場合は、憎むこともなかった
およそ感情というものを持つことがなかったので…あなたが李家の道具だったように、私は国家の道具でした」

特殊任務部隊、スペツナズに入った頃、ブランカは自分の妻であった女性、ナタリアと出会った
だが、当局は2人の結婚に強く反対した

理由は、ナタリアの父が旧ソ連時代に政治犯として処刑されていたからだ
だが、ブランカは初めて当局に逆らいナタリアと一緒になることを選んだ

「彼女と出逢って、私は初めて人間らしい感情を持つことができたのです
…彼女を失いたくなかった。しかし、私が任務でクリミアへ赴いた時、ナターシャはテロ事件に巻き込まれて殺されました」