大王女様と山猫小僧8 (ページ47)

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自分が一方的に話しても、瑞姫はアッシュの話題以外に興味はなかった
ただ彼女の中には、アッシュだけがあった

そして、同じ日本人の英二のことも

「ずるいよ…！ずるい、ずるい！彼女の気持ちまで持っているのに、それを手放そうとして…！」

ずるくてずるくて、仕方ない
手に入らないのなら、いっそのことこの手で壊せばいい

歪んだ気持ちが、この事態を招いてしまったのだ

ブランカは白樺瑞姫という人間を知っている

白樺瑞姫は不思議な人間だと感じていた

類い稀ないバレーボールのセンス、セッターとしての才能、プレイヤーの限界値を引き出す才能、なによりも…バレーボールに対するあの貪欲な姿勢

白樺瑞姫の公式戦を見たことがあった

彼女のプレーは鮮やかで軽やか、それでいてひっそりと佇むのではなく力強く存在感を感じるプレイヤーだった

なによりも、クラブチームが同じで幼馴染の深澤健一とのコンビネーションは抜群だった
チームメイトからも阿吽と呼ばれるなど、なんの合図も声かけもないのに意思疎通ができる

彼女は友人にも恵まれた、才能にも、センスにも恵まれた

群を抜いたその才能とセンスは、どのチームに入っても発揮されて行き、なによりも…誰をも使いこなせる天才というべき存在であった

だが、彼女の背後に本物の天才が現れた
黒川翔。彼女の２つ年下で、同じクラブチーム、同じ部活動、さらには同じ学校という共通点をいくつも持っていた

彼女の才能は瑞姫の才能を脅かすほどであり、「天才」という意味を凌駕するほどの才能を持っていた
天才と呼ばれてもおかしくない瑞姫へのレッテルは「秀才」となった

インターハイでの試合の映像では、幼馴染とのタッグは組めなかったものの、クラブチームでのインターハイにも似た大きな大会ではその才能をフル活用していた

阿吽の呼吸とも呼ばれてもおかしくないその幼馴染とのコンビネーションには、舌を巻き、彼女の才能はやはり本物の天才とは少し違っていた

クラブチームでも現れた本物の天才と努力の天才
彼女のチームのリードは変わらない、チームも至って安定、なのに不安で仕方ないものはこちらにも伝染してくる

ウォームアップゾーンで、欲求不満を溜めた、小さなケモノが

本物の天才の速すぎるトスを唯一打てる…小さなケモノ