大王女様と山猫小僧8 (ページ29)

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『……わかったよ』

「…ありがとう」

なんのために、頑張ってた1年なんだろう
殺せんせーを暗殺するために培ってきた力じゃなくて、誰かを守る目的のために使うと決めたのに…

守りたいと思った人に、守る目的のために使うと決めたこの力を

使えないなんて…

「白樺さん…」

『いこ、オックン…』

悔しい、悔しくてたまらない

「瑞姫、大丈夫？」

『…うん。本当のことだし、それに…私、弱いから』

体術も、ナイフも、いろんな面で私は平凡な人間だった
所詮は平均的なものだろう
もしかすると、暗殺の成績も下から数えた方が早かったのかもしれない

あーあ、もっと真面目に暗殺の訓練しておけばよかったなぁ
後悔先に立たず、まさにこのことだ

アジトからシンを先頭に地下水路を通りながら逃げる中、やはり気になってくるのはアジトに残ったみんなのこと

アッシュたちは無事だろうか…逃げ切ることができたのだろうか…それとも、弾が切れてしまって捕まっているのでは？

嫌な考えがグルグルと頭の中を駆け回っていき、落ち着くように深い呼吸をすると、「ああ、もうダメ！」とジェシカが大声で言った

「悪いけど戻るわ。止めないでね」

『ジェシカ!?』

「悔しいけど、まだ愛してんの！」

『いやそれはいいけど…ってあぁ！待ってってば!!』

「ジェシカ！待って、ジェシカ！」

「英二！瑞姫！」

元きた道を引き返して走っていくジェシカを追いかける
地下水路を飛び出してみんなでアジトの近くまでくると、ほんの少し薄明るくなってきた周りに体を隠しながら進んでいくと、アッシュたちが捕まっていた

「アッシュ！」

『うわぁ…あいつらか…』

「知ってるの？」

『いや…でも、すごく強そう』

あのリーダー格の男…頭が切れそうだな…戦闘能力は烏間さんに劣るとしても、頭脳戦では磯貝とカルマとタメを張るかもしれない

「シン」

「！」

「えらいことになったな」

『…ケイン、アレックス』

奥から2人が出てくると、みんなで物陰に隠れてアッシュたちの様子を聞く

マックスやボーンズ、コングたちを拘束してトラックに押し込んでいく奴らに「どこへ連れて行く気だ？」とアッシュが聞いているけど、相手がなんと答えたのかよく聞こえない