61話 過去の時間 ページ39
「だから生き延びてこられたってこともある。いつも先回りして考えて…落ち着かないんだ、だからいつも、最悪のことを…」
毛布に顔を埋めたアッシュは小さな寝息を立てて眠り始めた
飲み干したマグカップを置き、体を小さくすると「寒くない？」と聞かれた
『大丈夫』
「そう…？…白樺さん」
『ん？』
「そろそろ、教えて欲しいんだ…キミのことを」
『………』
「薄々教えてはくれていたけど、僕はやっぱりキミの口からちゃんと聞きたいんだ
キミのことや、キミの先生のこと、そして…どうしてキミが銃を扱うことに躊躇いがなかったのか」
『………………わかった』
アッシュを起こさないように小さな声でオックンに聞こえるようにはっきりとした日本語で話す
『3年前…月が7割消滅したニュースを覚えてる？』
「うん…大々的に報道されてたから覚えてるよ」
『その月を破壊したのは、超生物だということも3年前の冬に報道されてたのは知ってると思う』
「うん」
『だけど事実と報道は違う』
「え？」
『月を破壊したのは、超生物…殺せんせーじゃないんだ』
「どういう…」
困惑しているオックンに私は、静かに自分のことを語り始めた
『私が在籍していた学校、椚ヶ丘中学校は進学校でね。AからEまでのクラスで、上から順番にA、B、C、D、と続いてたんだ…そして、Eは「END」として学校の落ちこぼれ扱いされてきた』
「………」
『通称「ENDのE組」私はそこに在籍してた
バレーのしすぎで勉強をおろそかにしたせいでね。学校からも落ちこぼれ扱い、差別されてきた私たちが未来を見ることもなくただ1年をぼーっとしている中、突如として現れたのが超生物、殺せんせーだった』
殺せんせーが現れたことによって、私たちE組は少しずつ変化することができた
自分の力を、そしてみんなの力を合わして強敵を倒すことができたのだ
『時に間違えることもあった…褒めてもらえることだってあった…』
「………」
『あの報道は殺せんせーを悪く言うことだったけど、事実とは違うんだよ…
殺せんせーは私たちのことを親身になって聞いてくれていた。見ていてくれた
高校進学だって、大切なことをちゃんと聞いてくれたしたくさん相談もしてくれたよ
ストックホルムとか言われたって、私たちはそんなことないって叫んだ。だけど、誰も聞いてくれなかった』
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作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2021年8月25日 20時
