大王女様と山猫小僧6 (ページ8)

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「昨夜は悪かった、僕が言いすぎたよ」

「日本人ってのはすぐ謝るんだな。伊部もそう言った」

「伊部さんと話したの!?」

ガタンと立ち上がった英二に周りは「シー！」と指を立てた
あわあわしている英二にため息を吐いていると、「あれ」と英二は首を振りキョロキョロと周りを見回した

「白樺さんがいない…」

「瑞姫？」

「うん。一緒に来たんだけど」

俺もつられて周りを見るも、瑞姫の姿はない
英二が「探してくる」と言って行くのに対し、俺もついていき瑞姫を探した

絵本コーナーや雑誌コーナー、端から端まで探していると医療や法律のことについて書いてある本を一緒くたに置いているコーナーに瑞姫がいた

「白樺さ…」

英二が見つけて声をかけようとした途端、瑞姫の目つきが変わる
どこか難しそうで、それでいてしっかりと理解しようとしている必死さがよく伝わってきた

「…白樺さん」

「…………」

才能がない

それは、ないなりに理解しようと追いつこうとしている瑞姫が言う資格はないと思った
俺からすれば瑞姫は才能の塊だった

バレーができる、人を笑顔にできる、無邪気でいるだけで楽しい気分にさせる

俺にとって才能はそうだと思う
でも瑞姫本人はそれが才能だとは思っていなくて、俺のような容姿も頭もいいことや人よりも秀でた何かが才能だと言う

『くそっ…竹林のやつぅ…こんなの読んでるのかよぉ……「良い子もわかる医学書」とか買うか？
千葉だって建築のこととか、カルマも寺坂も政治とか、むっず…なにこれ』

「英二、なんて言ってるんだ？」

「えっと、カルマくんの名前が出たってことは多分…カルマくんや他の友達のために理解しようとしてるのかも…」

「…！」

「すごいなぁ…アッシュのこと、勤勉家だって言ってたのに…白樺さんも勉強熱心だよ」

「…………」

『医学に政治に建築に…介護に教師に外交官に…あとなんだっけ…は？警察とか…いや、わかるかよ』

グチグチ言いながらも何か手探りに本を読み進めてはやめてを繰り返している瑞姫に、英二は「白樺さん」と小声で声をかけた

『あれ、オックン。仲直りできた？』

「うーん、多分」

『っていうかさ、私の元クラスメイトハードル高すぎじゃない？なんなの？外交官とか、官僚とか政治家とか警察官とか医者とか…無理無理、ついてけないハードル高い』