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「内陸の方じゃ海なんかテレビでしか見たことない奴とか、自分の住んでる町を生まれてから一歩も出ずに死んじまう年寄りがゴロゴロいるんだぜ」
『アメリカの端から端まで行くのに1週間はかかるもんね〜』
「ふうん…」
柵にもたれながら海を眺めていると「まるでスティーブン・キングの小説みたいだな」とオックンが言った
「トウモロコシ畑がどこまでも続く道とか、よそ者を嫌う村とかさ」
「確かによそ者には住みにくいだろうな
…俺の母親も、よそ者だった。ケープ・コッドに夏の間避暑にやってくる都会の人間の1人だった
逃げ出したくなっても無理はない」
『…………でもさあ、アッシュのお母さん、きっと別れる時すっごく辛かったと思うよ』
「…そうかな」
『うん、絶対』
アッシュが海を眺めながら言うと、『アッシュの名前、前に話してくれたでしょ？』と言うと私にアッシュは振り向きこちらを見た
『アッシュの本当の名前「アスラン」って、お母さんがつけたものなんでしょ？何か意味があるの？』
「古代ヘブライの祈りの言葉で…「暁」って意味だそうだ
俺は、夜明けに生まれたから」
『ミドルネームの「J」は？』
「Jade…翡翠、だ」
『は？ムカつくほどいい意味じゃん、腹立つ』
「白樺さん？」
つい真顔で言ってしまうと、オックンは「お母さんは一生懸命、その名前を考えたんだよ」と笑って言う
「夜明けに生まれたキミの幸せを願ってさ
キミの人生が夜明けの翡翠みたいに素晴らしいものであって欲しいって
そう言う人が、キミを愛してないなんてことありえないよ」
「じゃあどうして…」
「？」
「いや、きっとそうだったんだろう」
『ってか、オックンめっちゃポエミーじゃん』
「え、そうかな？」
恥ずかしげもなくそうやって言えるのって、オックンだけだろうね〜
からかっていると、どこからか刺すような殺気を感じた
『！』
「白樺さん？」
『…………今の感じ、どっかで…』
「？」
目だけを動かして周りを見てもその気配はどこにもなかった
でも、まさか…まさか…！
「どうしたの？」
『………ちょっとごめん』
「え、白樺さん!?」
「おい、瑞姫！」
観光客を縫うように動いていき、当たらないように静かに動き船内に入ってみても、どこにも怪しい人はいなかった
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作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2021年8月24日 18時
