大王女様と山猫小僧5 (ページ42)

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『うん。アスレティックトレーナーは、選手の健康管理とか怪我の予防とか、怪我をした時の応急処置とかいろんなところから選手を支える人なんだよ』

「へぇ…」

『健ちゃん、私の足の怪我のこと気にしててさ。もっと気にかけてたらとか、もっと止めておいたらとか…終いにはもっと強く言ってボールぶつける勢いで止めればよかったって言ってた。実際そうしてたんだけどさ』

健ちゃんは私が足の怪我でバレーをしない期間、本当に辛そうだった
私のトスを打ってきたのもあるし、ずっとタッグを組んでたのもあるから健ちゃんとしては悔しかったんだろうな

「そっかぁ」

『健ちゃんはいつか夢を叶える。私の幼馴染だもん。健ちゃんだって健ちゃんなりに考えて決めたんだし、私がそこに反対する権利はない
でもなぁ…健ちゃんに健康管理されるのってちょっと怖い…』

「え、なんで？」

『だって健ちゃんだよ!? 鬼みたいにボールぶつけてきたり、頭突きしてきたりするんだよ!?』

「それって、瑞姫ちゃんが原因なんじゃ…」

カエデちゃんが苦笑いしていると「おーい、もうできるぞー」と磯貝が言った
ソファから飛び降りると『おいしそー！』と鍋の中を覗き込む

「皿出してくれ」

『はーい。皿ー！』

「ホント、食い意地張ってるね…瑞姫は」

『磯貝のご飯美味しいじゃん。差し入れに欲しいくらいだよ』

「はははっ！世界に行く奴が何言ってるんだよ」

「でも本当に会えなくなっちゃうね…ブラジルとアルゼンチンだもん…」

『……………うん』

戸棚から深いお皿を取り出し、磯貝に持っていく
アルゼンチン…日本とは反対側に位置する国で日本とは違った未知の国

正直やっていける自信はないけど…それでも、バレーがしたい
足が使えなくなっても、バレーがしていたい

「さて、用意もできたことだし…食べるか」

「「いただきまーーーす」」

「いただきます」

手を合わせて箸を持ち、磯貝の肉じゃがを口の中に放り込む
味がしっかり染みててすごく美味しくて声にならない叫びを出す

「美味しい〜！」

「磯貝くん、また腕あげたね」

「ここのスーパーの調味料がいいんだよ」

『たしかに…日本のスーパーより0の方がひとつ多かった』

「「うわあ…」」

『磯貝〜やっぱり毎日ご飯作りにきてよ〜』

「俺も大学あるからなぁ」

『なら無理か〜』