大王女様と山猫小僧5 (ページ32)

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ー深夜ー

『やっぱり、バレーボール触んないと感覚忘れちゃうもんね〜』

アッシュとオックンが眠っている隣の部屋で静かにオーバーのトス練習をする
ここ最近ボールに触れてなかったし、感覚を呼び起こすのと取り戻すのにはちょうどいいだろう

ｶﾀﾝ…

『…ん？』

何かの物音が聞こえてきて、目を向けるとよろよろと誰かが廊下を歩いていた
ボールを置いて後を追いかけると、洗面所で顔を洗っている誰かがいる

『…アッシュ？』

「！」

じゃーーっと流れる水音と同じぐらいの声の大きさで声をかけると、ピクリと体を揺らした相手…アッシュは、私に気づくと「瑞姫…」とたどたどと私に歩み寄り抱きしめてきた

『…どうしたの？』

「………怖い」

怖い、と言われても…
私にとっては…強敵を笑顔で倒す烏間さんや、笑顔で嬉しいな袋使って殺し屋の五感を変えてしまうカルマや、天才の殺し屋に本気で戦われることの方が怖いんですけど…

ぽんぽんとアッシュをあやすようにしていると、鏡にオックンが映った
『オックン』と呼ぶと静かにこっちに歩み寄り「アッシュ、ベッドに行こう？」と声をかけた

付き添う形でベッドに向かうと、ベッドサイドに置かれた明かりにアッシュとオックンの顔が明るく見えた

アッシュをオックンに任せて部屋に戻ろうとすると、アッシュが私の手首を静かに掴んだ

『…大丈夫？』

「………」

『…どうしたらいい？』

「……ここに、いてくれ」

小さな震える声で言ったアッシュに『うん』と頷いて隣に座った
アッシュは少しだけ目を閉じると、「忘れようとしたんだ…」と震えた声で言う

「…ざまぁねぇな。ギャングのボスで、男娼あがりの殺人鬼としたことがよ」

「よせよ、そんな言い方」

『アッシュ…』

「俺は8歳の時、初めて人を殺した」

アッシュが涙で濡れた顔を向けて言う
人を殺した…殺すと言う言葉は私たちE組にとっては勇気をくれる魔法の言葉で、初めて人を殺したという事実を知るのは、これで何回目だろうか

私たちE組は、殺し屋が多く集まる場所だった
世界最強の殺し屋、「死神」やビッチ先生、ロヴロさんにレッドアイさん、その他にもたくさんの殺し屋と出会った