大王女様と山猫小僧5 (ページ27)

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『ねー、救急箱とかどこにあるのー？』

「そこの戸棚にないか？」

『んー…』

ゴソゴソと戸棚を探っていると、ズルっと何かが落ちてきそうになった
これはやばい、そう思った時に両手で抑えようとするとパシッと別の腕が伸びてきた

「あっ…ぶねぇ」

『アッシュ…』

「オネエチャン、危ないから向こう行ってて」

『むっ…』

「はいはい、可愛い顔してもダメ」

『…………』

ニヤニヤしながら戸棚を探り始めたアッシュを見ながら、オックンがいるさっきの部屋に戻ると「スマホ鳴ってたよ」と言われた

ベッドサイドに置いていたスマホを見ると、「モバイル律起動中」という文字が出ていた
こりゃ4、5分はスマホ触れないや…

「英二、手当て頼めるか？」

「うん」

オックンに救急箱を手渡したアッシュはタブレットでニューヨークタイムズを見ていた
アッシュの横に座り、覗き込むようにして見ているとアッシュは「見るか？」と言ってきた

『いいの？』

「いいぜ」

覗き込むと、画面にはピーター・グラントの記事があった
どうやら次期大統領候補の人間が女秘書に殺されたらしい

『…なんか、難しい事件だね』

「オネエチャン、子どもっぽいね」

『……』

ピクピクと眉を動かしイライラとしていると、「いでっ!!」と声をあげた

「ごめん、痛かった？」

「痛かったあ？お前はどうか知らないが、俺はデリケートなんだ。そんな雑に傷をいじられれば、すっごく痛い！」

2人(口に怪我すりゃよかったのに…)

注文も多けりゃ皮肉も多い。この腹立つほどに整った顔にのっている形のいい口にちょっと腹が立ち、ジトリと見ているとオックンが「ふふん」みたいなちょっといたずら小僧の笑顔になった

「そりゃー悪かった！なにしろ、ぶきっちょな日本人なもんで！」

わざと雑に手当てをしてありったけの包帯で体中をぐるぐると巻いていくオックンに、パチパチと目を瞬かせると、アッシュはすっかり出来損ないのミイラになった

『おーおー、イケメンが出来損ないのミイラになってる』

「…助けろよ」

『アッシュが注文多く言うからだよ』

オックンが歩いていくのを見送り、『ひひひっ』と笑いながらアッシュを見ているとアッシュがスルスルと包帯をゆっくりと外していく