大王女様と山猫小僧5 (ページ17)

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「う……くくく…くく…」

『(ﾌﾟﾙﾌﾟﾙ』

「な、何がおかしいんだ！」

頬を染めて聞いてきたアッシュに、「今の話、他人にしない方がいいと思うよ」とオックンが震えながら口元に手を当てて笑いを堪えている

「マフィアを1発で仕留めるキミが、カボチャ…プッ！ははは！ゴルツィネに教えてやりたいよ
役立たずのボディーガードより、カボチャの栽培でもしろってさ！」

『あっはははははは!!! それ面白い!!! ひーーーーっ!!!』

大笑いを始めたオックンにつられて腹を抱えて大きく笑い始める
バンバンと自分の太ももを叩きながら笑い転げると、アッシュは頬を膨らませプイと顔を背けた

「ふん！笑ってろトーフヤロウ！」

「はーー…そういえば、白樺さんに怖いものはないの？」

『無敵だからね！』

「へぇ…」

『ねえ、オックン。聞いてきたのオックンだよ？』

関心がないですというような声のトーンにちょっとショックを受けながらもオックンを見ていると、「なら、憧れたものは？」と聞かれた

『あるよ』

「へえ、なに？」

『小学生の時にさ、東京が会場だった日本VSアルゼンチンの試合を見に行ったんだ。幼馴染の健ちゃんって子と一緒にね』

「へぇ…」

『当時アルゼンチンには、若い“スターの卵エース”がいて、大会序盤は大活躍してたんだけど、中盤からどんどん調子を落としてた
日本戦でもイマイチで、そろそろ交代かなーって時に、セッターが代わった
当時はもう40手前になるベテランのセッターさんだったんだ』

その人がコートに入ってきた時、私は特に何も思わなかった
ただ、この人はどんな風にトスをあげるのかそれだけが気になっていた

『その人は終始穏やかで、若手エースに集めすぎずでも打ち易いセッティングで決めるところは決めさせて、スターの卵はみるみる調子を取り戻し、その試合で最多得点を叩き出した』

「へぇ!!」

『会場は若手スターの復活に沸いたけど、私にとってのスターは、エースをひっそり立て直してあっさりとコートを去っていったヒロ・ナルミヤだった』

「ん？日本人？」

『アルゼンチン人と日本人のハーフ』

「へぇ…」

あの時の興奮はすごくて、私も子どもだったから転けそうな勢いでアルゼンチン側のコートに駆け寄って『サインください！』なんて大きな声で言ったんだよね