大王女様と山猫小僧5 (ページ15)

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「キミは自分の力の上限をもう悟ったっていうのかい？」

『…………』

「技も体も精神も、何一つ出来上がってないのに？」

『…………』

「自分より優れた何かを持っている人間は、生まれた時点で自分とは違い、それを覆すことなどどんな努力・工夫・仲間を持ってしても不可能だと嘆くのは、全ての正しい努力を尽くしてからで遅くない」

健ちゃんに昔借りた本、私が憧れたもう一人の人間が言っていた言葉をそのまま言っている気がした
いや、そのままだったんだ

「ただ、“自分の力はこんなものではない”と信じてひたすら真っ直ぐにただ進んでいくことは、“自分は天才とは違うから”と嘆き諦めることより、辛く苦しい道であるかとしれないけれど」

『…………』

アニメの、漫画のキャラクターの言葉が今目の前で憧れたキャラクターが言ったように…今目の前で、憧れた選手がはっきりと言った

ただその事実に躍動感がした

『アニメや漫画の世界だと思ったら、現実でも起こることなんだってあの時初めてわかった…』

《…！》

『私はあの時、絶対にこの人から学ぶって決めた。そしたらさ！聞いてよ磯貝!! 翌年からアルゼンチンに行くんだよ!!』

《あ、あぁ…。そういや、お前留学はブラジルだったな》

『うん。ブラジルで半年間やった後、ヒロが待ってるアルゼンチンに行くつもり。まあ、昔から海外に絶対挑戦することは決めてたしそれが今になっただけ
どうせ行きたい場所は変わらない』

ヒロは「待ってる」と言ってくれた。アルゼンチンで、待つと言ってくれたのだ
私という一人の選手が自分の元に来ることを待っていると…

たったそれだけでも嬉しいのに、ヒロは最高のチームになりつつあるとも言っている
私がそのチームに入ってさらに最高のチームにしてやろう、そう思ったりもした

「白樺さん、そろそろご飯食べよう」

『あ、うん。じゃ、またね』

《あぁ、気をつけて》

『うん』

磯貝との電話を切った後、スマホをポケットにしまうと「電話、誰からだったの？」とオックンが聞いてきて『中学の友達！』と答えた

そうだ、あとでヒロにも連絡しておかないとなぁ
まあ、いいか！どうせまた忙しいんだろうし、こっちが暇な時に着信入れとけばいいか