大王女様と山猫小僧5 (ページ12)

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前に行けば高い壁に阻まれ、後ろに行けば見えない何かに獲り殺される

来るな

来るな

こっちに

私の前に来るな

その時の私は冷静じゃなかった
ただサーブを教えて欲しいという後輩に、手を出そうとした

「落ち着けよバカ!!」

『……………ごめん』

「黒川、悪いけど今日は終わりだ」

「あ…はい」

健ちゃんに言われて気まずそうに出て行った後輩を見て、私はその場に立ち尽くした

「今日の交代は、お前の頭を冷やすためだろうが。ちょっとは余裕を持て馬鹿野郎」

その言い方をされて私はムキになって言い返した

『今の私じゃ、羽場真矢に勝てないのに余裕なんかあるわけない!! 私は勝って全国に行きたいんだ!! 勝つために私はもっと』

「“私が私が”ってうるせぇぇぇェ!!!」

『ギャッ!?』

頭突きをされて鼻を押さえながら健ちゃんを見た

「てめえ一人で戦ってるつもりか、冗談じゃねぇぞ馬鹿野郎!! てめーの出来が＝チームの出来だなんて思い上がってんならぶん殴るぞ！」

『もう殴ってるじゃん!!』

「1対1でハトリに勝てるやつなんか、椚ヶ丘にはいねぇ!! けど、バレーはコートに6人だろうが!! 相手が天才1年だろうが、ハトリだろうが、“6人”で強い方が強いんだろうが!!」

『…！』

健ちゃんに言われてそのまま地面に座り込む
6人で強い方が強い、か…どっかのアニメのセリフもろパクリじゃん

『ふ…ふふ……あー』

「スマン強く頭突きしすぎたか、大丈夫か!?」

『んーん、なんかね…俄然無敵な気分！
っていうか、健ちゃん。馬鹿野郎しか言えないの？ボキャブラリーってわかる？』

「右からも鼻血出してやろうか」

健ちゃんのあの一言のおかげで私はすっかりと吹っ切ることができた
だけど、やはりバレーにばかり力を入れてしまって勉強が疎かになってE組に落ちた

クラブは全面的に活動禁止
おかげでクラブチームに入らないといけなくなったけど、健ちゃんは部活を辞めて私のサポートに入るために一緒のクラブチームにまで入ってくれた

あのバカも一緒に入ってきた時は腹立ったけど、それでも楽しかった
それから、数ヶ月後…中学最後の大会、対羽場真矢との戦いで、初めて1セットを獲ることができた