大王女様と山猫小僧5 (ページ11)

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私は、基本的にヘラヘラしている人間だった

でも、そんな私が笑わない時期があった

人よりも体格に恵まれ、センスにも恵まれた

特に中学校での活躍はめざましく、やはり椚ヶ丘のバレー部での活躍も凄まじかった

それでも

越えられない壁は常にあった

“怪童”だの“神童”だのともてはやされた葉山飛鳥を迎えて県内最強と言われるようになった、羽場真矢学園中等部

対戦すれば負けた

1セットすら取れずに終わったのだ

『なんで勝てないんだ!!!』

もっと上へ、もっと高い舞台へ

阻まれ続けて中学3年間、今度は

背後に天才が現れた

「白河小出身、黒川翔です。バレーは小1からです。よろしくお願いします」

中学1年の新入部員
そのセンスは圧倒的に輝いていた

なによりもボールに触れていることが嬉しくて仕方ない様子と、それに伴ってボールの扱いの慣れ方が他の奴らとは段違いだった

「基本いろんなポジションはやらせるが、ゆくゆくはセッターだな」

『………ッ(ｸﾞｯ!!』

その言葉を聞いてから焦りが出始めたのは明確だった

それから今まで以上に練習に打ち込むようになった

「オーバーワークだ！昨日も監督に注意されただろうが!!」

『うっ…！』

「怪我したら元も子もねえんだ!! ほら、終わりだ！ストレッチ!!」

幼馴染の健ちゃんに言われてなくなくストレッチをして終わる日が度々あった
それでも、ひたすらに焦っていた

その焦りは練習試合でも、今までにあり得ないほどの回数のコンビミスとなって現れ始めた

「黒川、入ってみろ」

「はい！」

私の代わりにセッターとして出されたあの子が憎かった
私の代わりにたくさん試合に出て腹立たしかった

私の代わりに、たくさんの点数を取って行くのが悔しかった

その日、試合の結果なんて気にすることなく居残りの練習をしてひたすらにサーブの練習をした
悔しくて、ひたすらに焦って焦って、それをバレーをすることで発散する

無限に発散されないストレスに苛立ちを覚え始め、息が上がっていた私に

「白樺さん、サーブ教えてください」

無垢な笑顔で、期待する顔で、そしてなによりも無自覚なそいつの存在が、私にとって恐ろしく得体の知れない存在だった