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53-3 ページ5

(異様な咀嚼音は昼夜問わずに響き渡り、群れの去った後の荒れ果てた土地と、それを覆うバッタが分泌した黒い粘液は平穏とは程遠い光景を描く
人々はその悪魔のような昆虫を、恐れ、憎み、呪った)














顔を四方に動かして男に襲い掛かるバッタの呪霊に、男は「チッ」と短く舌打ちした













(バネと顎のレベルは段違い…言葉がわかるってことはそれなりのレベルの呪い…)












その時、男の懐に入り込み殴り飛ばそうとしたバッタだったが、それを軽く避けた男は杖を回してバッタの腹に叩きこみ、そのまま思い切りよく蹴飛ばした











(咬みつき、タイミング自在の4本腕、躊躇なく距離を詰めてくる)

(逃げテバッカリ…)

(多分、小細工はないな)

「オマエ、ドッチだ?」

「なにがだ?」

「賢いノカ、賢くないノカ。俺は…賢い」

「はぁ…そのおめでたい頭に免じて教えてやるよ」













男は頭を抱えた後、ニッと白い歯を見せて笑う














「賢い奴は、自分のことを賢いなんて言わない」

(そーーーーなの!?)













手数勝負に出た






殴り合いが始まり、男はバッタの攻撃を全ていなし、自分の攻撃を叩き込んでいく














(腕も顎モ目も、人間ヨリ俺の方が優れテいる。ナノになンで、なンで俺ダケ、殴らレる!??)











膝をついたバッタは、ゴプリと黒い液体を男に吐きかけるも男はそれを読んでいたように下に屈み、バッタの懐に入り込んだ












(デモ、やっパり、俺の方ガ……賢い!!)












バッタは地中に産卵する。そのため腹部は伸縮し、先端は硬く通常時の3倍近く伸ばすことができる













腹部が勢いよく男の顔にめがけて飛んでくる













(俺の勝チ)

「言っただろ?」

「!」

「人間舐めるのも大概にしろって、よぉ!!」













バッタの腹部を殴りつけ、切断した男はすぐに立ち上がり長い足でバッタの顔を踏みつけるために振り上げた














「てめェは、人を喰った。覚悟は、できてるだろうなぁ?」













小細工はあった







だがそれ以上に










小細工では埋まらない実力差が、両者にはある



















「チッ…手間取らせやがって」










バキンッと釘を壊した男は、「てめェも、難儀なもんだな」とバッタに振り返った

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作者名:サッカーバカ | 作成日時:2022年5月21日 14時

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