142話 ヒューマライズ ページ9
NOside
「昔、超常的異能……すなわち、“個性”が人類にもたらされたのはなぜか…」
薄暗く広いその空間は、まるで神殿のようだった
左右の高い階段の先には壇があり、背後には大きなシンボルマークが掲げられている
“個性”や無個性に関するおびただしい蔵書に周りをぐるりと囲まれたなにかに、白いローブを羽織り顔全体を覆う灰色のマスクをした無数の人間がいた
そんな中、冷や汗を流して白いローブを身につけている男が1人いた
「くっそぉ…なんだってこんな隠密ミッション俺にさせるんだよー…」
《キミが1番そう言ったことが得意だと聞いたからね。しっかりと…自分の責務を果たすんだよ、アカロ》
「はい、寮長」
《よろしい》
気怠げに答えた男…アカロは視線を高い壇上にいる1人の青い肌の男に向けた
「初めの異能者「光る赤子」が生まれたのはなぜか…」
アカロはチラリと人類に初めて“個性”が現れたとされる「光る赤子」の像に目を向けた
その像に槍を持った者たちが刃を向けている
「全ては悲劇である。“個性”は人類にとっての福音ではなく、終末への始まりだったのだ
この「個性終末論」に記されている」
天井にはさまざまな生き物が混じり合った怪物・キメラのような壁画があった
アカロはそんな壁画を見て「うげぇ…趣味悪…」と心の中で吐き捨てた
仰々しく「個性終末論」と記されている本を掲げた男…フレクト・ターンをじっと見つめたアカロは話の続きに耳を傾けた
「世代を経るにつれ“個性”は混ざり深化し…やがて誰にも、その力をコントロールできなくなる…」
その言葉にローブを羽織った者たちは不安をおくびにも出さず、静粛にローブに描かれたシンボルマークに左手を置き、フレクトに忠誠を誓っている
アカロもしたくはないが、潜入している身、バレてはいけないためイヤイヤながらもシンボルマークに手を当てた
「人類の8割が“個性”という病に冒された時代…
残された2割の純粋な人類も“個性”保持者と交わり、その数を減らしていく
絶滅は目の前に迫っているのだ」
(別にいいじゃんそんなの…誰と寝ようがさ)
はぁっ…と小さなため息をつきながらアカロは、フレクト・ターンを見つめた
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作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2021年8月5日 17時
