元殺し屋はヒーローになる20 (ページ24)

今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:23,942 hit

145-2 ページ24

『お宝を放り投げるなんて』

「！」

『取ってくれって、言ってるようなもんでしょ』

「あ"〜っ!!」

空中に放り出されたケースの持ち手を取った後、そのまま前転してビルのヘリに足をかける
さてと、ケースは取り戻したしあとはあの子を連行するかなぜこんなことをしたのか聞いて解放するか…

ケースの中身を一応確認しようと鍵に手をかけたその時、「Pi〜！」とまたあの小鳥が目の前に飛んできた
それをしゃがんでよけると、方向転換をしてこちらにまた飛んでくる

ヒョイヒョイと避けるとバッと脇から伸ばされた手が見えた
ケースを持って逃げていた彼だった。ケースを持っている手を上げると小鳥がくちばしで突いてきた。しかも、かなり強めに

『痛ッ…！』

ケースを取りこぼすととどめだと言わんばかりにまた突進してくる。それを右に逸れて避けると、グラッと体が傾いた

『は…』

「!?」

「Pi!?」

フワッとした浮遊感とともに下に落ちる。ケースを奪った彼は無意識なのか手を伸ばしてきた
それが綺麗にからぶると、彼は「おい！」と大声をあげる

この体勢からして、“個性”は使えない
冷や汗をかいて『マジかよ…！』とニィッと口角が上がる。どうやって着地しようか頭を回転させていると、「黒鞭！」と腰を絡め取ってくる黒い鞭が見えた

グンッと引っ張られ「青子さん！」と抱えられる

『緑谷、お前ほんとヒーローだね』

「…なに!?」

私が緑谷に助けられたのにハッとした彼はそのまま逃げていく
緑谷と私は気を取り直して彼を追いかけることを再開した

屋上からアパートの出窓のサッシにおりた彼は、ピョンピョンと飛び移っていく
その時、通り過ぎる窓をコンコンとノックしている

「ワン！」

「うわたたた」

『え、ウソちょッ!?』

「青子さん!!?」

窓から飛び出してきた犬に驚いてバランスを崩し、なんとか片手でサッシに手をついて窓を飛び越える
流石に今のはヒヤッとした

「青子さん」

『大丈夫、それより急ごう』

「うん！」

路地裏をスルスルと進んでいく彼に対して、緑谷は配線に絡まり、私は彼が洗濯物を干してあるロープにケースを利用して滑っていくのを見て、舞い落ちる洗濯物を回収する

洗濯物をなんとか持ち主へ返したあと、少年の姿を探すけどどこにもいなかった

『ったく…もーっ！アッシュを相手してる方がマシ…！』