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着慣れていないタキシードに身を包んだマックスや伊部さん、ショーターは息苦しそうにしているのに対し、俺はキルトと奥村のことで頭がいっぱいだった
「ったく、こんな格好させやがって、一体何を考えてやがる…」
『似合ってるよ、マックス』
「言ってろ。このイケメンめ」
「英ちゃんたちは、どうしたんだろう」
「きっと、大丈夫だろう…信じるしかねえ」
『………』
俺がテーブルの下で握り拳を作っていると、「さて、主賓が少々遅れているようだが…」というゴルツィネの声でハッとした
そうだ、アッシュがいない
まさか、どこかにいるんじゃ…
俺のそんな心配は杞憂に終わった
食堂に入ってきたのは、タキシードに身を包んだアッシュだった
いつもの履き古した赤いスニーカーとダメージジーンズ、白いシャツという姿から想像もつかないその俳優やモデルにすら見える姿に俺は
『…バケモン』
と、日本語で呟いた
それを拾った伊部さんは、「京ちゃんも十分バケモンだよ…」と言った
「美しい…実に美しい…」
『あんたに褒められても嬉しくないだろ…』
「生まれながらの貴族のようだ」
『貴族ならあんたは家畜だ』
「きょ、京ちゃん?」
俺は今だいぶ頭の中がおかしくなっている
目の前に現れたバケモン並みの姿のアッシュと、それにうっとりとしているゴルツィネ
なんだこの地獄絵図は
「ふん、山猫どころか化け猫だな…」
(誰がうまいこと言えなんて言ったんだよ…)
「では始めよう」
俺は目の前に置かれている水の入ったグラスに手をつけた
そのままゆっくりと飲み込み、チラリとアッシュを見る
タキシードはしっかりと似合っている上に、ヘアメイクも施されている
そこらへんのハリウッドスターよりもイケメンに仕上がったアッシュに、なんか腹が立って水をぶっかけてやりたくなった
「お前のために特別に選んだものだ。わかるかね?」
そんな俺の心境とは逆に、ゴルツィネは真向かいに座るアッシュに声をかける
グラスに注がれた赤ワインにアッシュは目を向けた後、口に含んだ
ワインを飲み、香りを嗅ぎ、一口飲んで舌の上で転がしている
その一つ一つの動作に腹が立ち、俺はプルプル震えながら『イケメンめ…』と吐き捨てた
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ルイ(プロフ) - え、つまり、オーサーにやられたの? (2021年9月5日 12時) (レス) id: de4baf91a8 (このIDを非表示/違反報告)
サッカーバカ(プロフ) - ユーマさん» こちらこそありがとうございます! (2021年8月26日 22時) (レス) id: 7487ed3f06 (このIDを非表示/違反報告)
サッカーバカ(プロフ) - ルイさん» ありがとうございます! (2021年8月26日 22時) (レス) id: 7487ed3f06 (このIDを非表示/違反報告)
ユーマ - 最高ですありがとうございます( ; ; )!! (2021年8月24日 1時) (レス) id: 9d9fb50ec0 (このIDを非表示/違反報告)
ルイ(プロフ) - 待ってました! (2021年8月20日 23時) (レス) id: de4baf91a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サッカーバカ | 作成日時:2021年8月3日 18時