元殺し屋はヒーローから海賊へ2 (ページ8)

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「じゃあ、青子がいた世界に帰る方法は…」

『今のところぜーんぜん、わかりませーん』

「そうなのか…」

『でもしばらくはここにいてもいいかな。向こうじゃ多分死んだことになってるだろうし』

「そうなのか!?」

『肺をひとつき。結構血も出てたし、間に合ってもってところだろうね…
緑谷があの場にいたから大丈夫だろうけど…』

通り魔に刺されたところまではよかった。だけど、刺された場所がいけなかったのだ
肺をナイフでズドンと刺された時、あの時死が一瞬見えた

死が怖くないわけではない、だけど死にたいと思ったこともない
私にとって死は、もう大事なものと会えないことを意味する

『助けたかった子がいたの』

「助けたかった子？」

『私よりもふたつ下の子で…16の時に会ったんだけど、すごく綺麗な子でね
金髪に翡翠の瞳、細くしなやかな体つき…喉から手が出るほど欲しいと周りから言われてた
あの子を助ける算段がついて、あの子を助けるために行こうと計画を立てた矢先に…ここに来た…
今向こうがどれぐらいの時間で進んでるのかわからない…もし、あの子がまた辛い目にあって泣いてたらと思うと…ヒーローの意味を考えるよ』

アッシュを助けたい
16の時、アッシュと出会って強く思った。あの子を取り巻く環境が、渦巻く全ての世界が、私にとって我慢ならなかった

あの時、無理矢理にでも潰してやればよかった
無理矢理、日本に連れて行けばよかったと何度も思った
だけどそんなことをしても、あの子は救われない。根本的な闇がある限り、あの子は救われない、救われやしないのだ

『でもきっと大丈夫だって信じてる』

「「？」」

『あの子は、誰よりも強く…自分の意思を持ってる』

抗うと、戦うと約束してくれた
大事な彼を守るために、私はこれからもヒーローとして最善の手を尽くすだろう

そして、彼を助けるためになんでもするだろう
ヒーローの人生をかけた勝負に出ることだって、私は怖くない

「そいつ、どんな奴なんだ？」

『うーん、皮肉屋で意地っ張りで、意地悪で…からかうとすぐに拗ねて…ほっぺたぷっくりさせて顔赤くすると首や耳まで真っ赤になる
頭はいいし、なんでもできる。力も強いし、銃を使って戦える…無個性だけど、自分を守るための武器はたくさん持ってる…そして…誰よりも優しくて心が綺麗な男の子…夜明けの翡翠の子』