元殺し屋はヒーローから海賊へ2 (ページ34)

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声がした方を見ると、鉄パイプ片手にシルクハットを被ったサボがいた
私に気づいたサボが「なんで、ここに…」と困惑しているのを無視してサボを抱きしめる

「青子…？」

『サボ、“不確かな物の終着駅(グレイ・ターミナル)”が火事になるって話、聞いた？』

「っ！」

『どうしてか、わかる？』

「っ…家に、帰ったら…養子がいた」

『！』

「おれが、もしもの時のためにって…そいつが、言ってたんだ…世界政府の「視察団」が、この東の海(イーストブルー)を回っているって」

サボが静かに教えてくれたのは、耳を疑う内容だった
抱きしめていたサボの目を見て話を聞く

「この「ゴア王国」には、3日後にやって来る…
今回はその艦に、世界貴族“天竜人”が乗ってるからって大騒ぎだ…王族たちは少しでも気に入られようとこの国の汚点(・・)を全部、焼き尽くすことにしたって……！
あの“ゴミ山”がなければ、この国はきれいな国だって…！」

『あそこには、たくさんの人間が住んでる…住む場所も失うし、あの“ゴミ山”から生活資源を見つけて暮らしてるのに…？そんなことできるわけが』

「青子…」

『！』

「この国の汚点(・・)は、全部(・・)燃やすって言っただろ」

『…………人も、なの？』

吐き気がした
口元を覆って、その事実が嘘であることを願っていたら、「おれ、よくわかんなくて」とサボが目を揺らしている

「青子…」

『…！』

「おれは…！」

“貴族に生まれて恥ずかしい…………!!!”

たった10歳、されど10歳
この世の全てを悟ったような叫びを、たった10歳の子どもに叫ばせる
そこまで落ちたと言っても過言ではないこの国を、私は…変えることができない

『ごめん、ごめんね…サボ……っ』

あなたにこんなことを言わせて、こんなこと背負わせて、何がヒーローだ…なにが、助けてみせるだ

『サボ…サボ、聞いて』

「……？」

『これから、サボはいろんなことに打ちのめされて絶望するかもしれない。だけど、だけど忘れないで
サボは1人じゃない、私がいる。私やルフィ、エースにアスラン、みんながいる
忘れないで、サボ。あなたは1人じゃない
何があっても、あなたは1人じゃない。ひとりぼっちじゃない。どこにいようと、私たちは』

きょうだいだよ