元殺し屋はヒーローから海賊へ2 (ページ25)

今日:5 hit、昨日:12 hit、合計:47,714 hit

13-5 ページ25

泣き疲れたルフィとアスランに布団を敷いて掛け布団をかけてポンポンと優しく撫でる
小さくみじろぎ、くかーといびきをかいているルフィの頭を撫でて、白い肌でもよくわかる目元を優しく撫でるとアスランは「お姉ちゃん…」と寝言を呟く

そんな2人に微笑みながら静かに部屋を出て、酒で酔い潰れたダダンさんたちを起こさないように外に出る
まだ夏で蒸し暑いけど、日本よりも涼しい
満点の星空を見上げると、「寝ないのか？」とエースとサボが歩いてくる

『ちょっとね…』

「？」

『夜が、怖いの』

「？」

「なんで？」

『………子どもの頃から黒いものが怖かった
なんにもない空間に放り込まれて、右も左も何もない中、光すらない…冷たい空間にいた…それが、8年も続いた』

「「…………」」

『馬鹿馬鹿しいって笑ってくれてもよかった…けど、黒いものはいつも私の大事なものを連れていくの』

「青子…」

『私の大事な宝物も、家族も、仲間も、奪っていくものはいつだって黒いものだった』

仲間の笑顔も、夢も、全部全部持っていってしまう
いつだってそうだった…彼の笑顔も、彼の夢も、あの子の未来も、全部奪っていくのは真っ黒の闇だった
それが許せなくて、太陽のように明るい光を照らせるぐらいになりたいと何度も思った

『私は、誰かのヒーローになれない…』

ヒーローになりたくて、雄英に入って、強くなりたくて、頑張って頑張って、出し切ってしまった
全て台無しになって崩れ落ちて、足元からガラガラと落ちて落ちて墜ちてしまった

次はもっとこうしよう、ああしよう、こうならないように、ああならないように、積み重ねて積み重ねて、余計に考えすぎて、溢れ出して、こぼれて…

プツンと切れた。全部が、どうでも良くなっていったあの感覚を、きっと忘れることはできない
初めての挫折と敗北、受けた代償は大きかった上に払った犠牲は大きすぎた

「青子はヒーローだよ」

『！』

「おれたちの、ヒーローだよ」

『サボ…』

「おれが海賊王の息子でも、青子は受け入れてくれた」

「おれが貴族の人間でも、青子は受け入れてくれた」

「おれたちにとって青子は」

「最高のヒーローだよ」

ねぇ、殺せんせー
私は誰かのヒーローになれたのかな？

いつまでも闇に怯えて生きている人間が、誰かのヒーローになりたいっていう夢を、また見てもいいのかな…
私は、自分が持てる全てでこの子達を守りたいよ