8話 視線の時間 ページ9
あれからというもの、視線という視線が日に日に多くなって気がした
授業中は特に何もなく、オーサーと練習をしているときも何も感じない
どうやら、視線の主は音楽学科ではないことは確かだ
昼休みになれば、ルカと集まって空き教室で食べることも少なからず3日に1回はあった
アッシュたちに昼を誘われた日は、「あいつらに伝えとく」とルカがすんなりと退いてくれたのは嬉しい限りだ
だけど、やはりアッシュといると視線を感じる
朝、昼、放課後、特に彼と一緒にいるたびに視線を感じるようになる
「イラついてんな〜」
『そりゃあね』
放課後、すぐに帰るのもなんだか気分が乗らないので図書館で暇を潰すため、ルカとともにいた
この大学に通ってすでに半年が経っている。そろそろ視線から解放されてもいいと思う
「んじゃ、俺先に戻ってるから」
『えぇ』
何冊か手に取ったルカは席に向かい、私も本棚から数冊手に取って階段を降りるために踊り場に行くと、不意に何かを感じた
階段を降りる前にあたりを見回してから、『気のせい?』と思いながら階段に足をかけたとき、後ろからドンッと押された
『えっ?』
フワッとした浮遊感を感じながら下に落ちていく
やばい、と思った時に本を手放して手すりを掴もうとしても空振りそのまま落ちる
「エスタナ!!!」
ドサッと後ろから抱えてもらうような形で着地した私は、顔を上げると真っ青な顔で汗をかきカタカタと震えているものの、私を支える腕はしっかりとしているアッシュがいた
『アッシュ…』
「馬鹿野郎!何やってんだよ!」
細く逞しい腕は階段の手すりを強く掴んでいて、しっかりと支えてくれているのがわかった
「エスタナ、怪我は?どこか痛いところはないか?」
『え、えぇ…平気』
その場に私を座らせたアッシュは、「あ"ー…マジで焦った」と髪の毛をクシャッとしながら言うもんだから『ご、ごめんなさい』と反射的に謝った
「エスタナは?本当に怪我とか」
『大丈夫よ、ちょっと踏み外しただけだから』
「…ホントに?」
『え、えぇ…』
「………」
『そんなに疑り深そうに見なくても…』
英二とシオンをジェシカと共にニューズ・ウィークの保護を受けさせようとした時に見せた表情に私は目を泳がせた
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作者名:サッカーバカ | 作成日時:2021年6月28日 17時