ヤマネコが愛したライオン2 (ページ48)

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キョロキョロとあたりを見回している時間もなく、動き出そうとすると「エナスタシア！」ともう目の前に現れた男

あぁ…逃げきれなかった

「今度こそ、返事を!!!」

『ふざけないで。大体、私はあなたのことが好きじゃないわ』

ばっさりと言い切っても、相手は「僕はあなたが好きだ」と言う
これ終わらないやつだ、知ってる…向こうでもそうだった

「今夜は僕が予約したレストランで食事でもどうかな？」

『結構です』

「いいじゃないか」

『とにかく帰って。大学にまで来るなんて…度が過ぎてるわ』

彼は「わかった、ではまた後で迎えにいくよ」と言い残して歩いていく
イラついた私に「あいつは？」とアッシュが聞いてきた

『ただの追っかけよ』

「追っかけにしちゃ、熱烈だな」

『そういうものよ』

「…そうか？ストーカーにしか見えないけどな」

『…あなたには関係ないわ』

「ちょ、エスタナ…」

「関係ないことないだろ？」

『…関係ない』

「関係ないわけない」

「お、おい」

「ア、アッシュ？」

『あなた、何様のつもり？私のなんなの？
自分の母親に言われて私の送り迎えをして、母親のご機嫌でもとってるつもり？』

「…なに？」

わかってる。これが八つ当たりだって
だけど、もう言い出したら止まらなくなってしまう

『迷惑なのよ。毎日毎日、私だって1人で学校にぐらい行きたいわ
息苦しいロシアからアメリカに来て、新しい友達や環境にも慣れてきたのに、どうしてあなたがいつも私の周りにいるの？学科も違えばなんの共通点もない人間をなぜ気にかけるの？
お母さんに言われたから？だとしたら私は子どもかなにか？』

「おい」

『この際だから言うわ、私はあなたの大切な人でもなんでもない。あなたのその大切な人という存在を重ねていい人間じゃないわ
名前も顔も知らない人に重ねられても迷惑よ』

「エナスタシア！」

『もう二度と、私に近づかないで。私はあなたの妹でも恋人でもなんでもないわ』

「…あぁ、わかったよ。そうだよな、俺はジェシカに言われてあんたの送り迎えをしてるだけだ
母親に言われたからしてるだけだ、俺の意思じゃない
それに、俺とあんたは家族でも恋人でもなんでもないもんな」

「お、おい…」

アッシュは自分のトレイを持ってスタスタと歩いて行ってしまった
残されたコーヒーが冷たくなっていた…