ヤマネコが愛したライオン2 (ページ40)

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月龍は授業があるからと行ってしまい、私はレッスン室へ向かった
個別のレッスン室は学部の人間に一人一人に与えられている
なんともまあ、金に困らない大学だ

鼻で笑いながらヴァイオリンのケースを開けた
窓の外からは中庭が見渡せる。その中、一際目立つ金色の髪の毛が見えた

『…神様は意地悪なのね…大好きな人と…一緒にさせてくれないなんて』

私じゃない人と笑い合っているアッシュを見て、涙が流れる
いいじゃないか、アッシュは銃と殺しのない世界で平和に幸せに生きてる

英二とショーター、シンもいる
きっと、あそこには月龍も入るんだろう

いいじゃないか…私がいなくても
私はもうアッシュとは一緒にいることさえできないんだ

『…さよなら、アッシュ』

いつの日か教えてくれたあの日本語を、私は消え入るような声で呟いた

ほんとに、さよならだねアッシュ
幸せになってね

ー1時間後ー

「荒れてるな、エスタナ」

『………ん？』

オーサーとのデュエットが一旦落ち着いたとき、休憩がてら外に出て木陰で涼んでいると、オーサーがいきなりそんなことを言うもんだから、反応が遅れた

「演奏」

『…ごめん』

「そう言う時もあるさ。で、何かあったか？」

『…………』

「言いにくいならいいぜ？」

『………好きな人がいたの』

「え？」

もう叶うことのないこの恋も、終わりにしよう

『ずっとずっと前から好きだった人が、違う人といることを選んだの』

「…………エスタナ」

『諦めたくないけど、無理なの…その人がずっとずっと会いたいと思ってる人だったから
私はその人じゃない、その人じゃないの』

「……」

『生まれた場所も、育った場所も変わってしまった
ただそれだけで、負けてしまうなんて…馬鹿みたいでしょ？』

狂おしいほど愛したあの人は、私に似た別の人を愛した
いや、私本人がレオンだという確証もない

『わかってたんだ…隣に立たないことぐらい…でも、無理なの…息ができないくらい好きなの』

「エスタナ…」

『馬鹿馬鹿しいって笑ってくれていいの…ただ、本当に…愛してるの』

諦めたくないと心が叫んでる
だけど、もう全て遅い

なにもかもだ…