ヤマネコが愛したライオン2 (ページ37)

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「そこからは必死さ。ろくに歩くことすらできなくなったチャイナタウンを1からやり直すのは…
シンの力を借りてようやく元に戻すことができた…アッシュの仲間達とチャイニーズの仲間たちが手を取り合うこともできた…
だけど、唯一の心残りだったのは…キミの自由になったあの7年を僕が振り回してしまったことだった」

カチャ…とソーサーに静かにカップを置いた月龍は、「本当に申し訳なかったよ、キミには」と言う

「僕は、あの孤独をあの7年でキミに埋めて欲しかったのかもしれない」

『…その孤独は、埋まったのか？』

「埋まらなかったよ。僕はアッシュやキミじゃないからね
奥村英二は不思議な奴でバカな奴だったよ…それは、今でも変わらない」

『あぁ…英二は変わらないよ…根っこからああ言う奴だから』

すっかり冷め切ってしまったコーヒーを口につけて頷くと、月龍は「あぁ、そうだよ」と頬杖をついた

「今じゃ、僕にまで世話を焼いてくる始末さ」

『………ひとつ、確認したい』

「なんだい？」

『…お前は、私が“憶えている”ことを、アッシュたちに伝えるのか？』

「伝えないさ。面倒だし、キミたちの問題だろう？僕には関係ない」

あぁ、いつもの月龍だ

私は笑みを隠すようにカップを口につけると、そのままコクンとコーヒーを飲んだ

「あぁ、そうそう。キミのストーカーだけど相変わらず熱烈だね」

『(ﾌﾞｯ』

「ロシアからキミのスマホに電話だなんて、全く賞賛に値するよ」

『なっ…なっ!?』

「ミスターから聞いたよ。キミもまた、辛い人生だね」

『あの野郎…っ！』

さも知らん風に言った月龍よりも、簡単に人の過去や現状を口走るブランカに対してどうにか1発殴りたいと思った

「…レオンという名前がある限り、キミの中にあの名前がある限り、キミは…自由になれないんだね
生まれ変わった体は自由が効かないんだろ？」

『………人殺しをした人間への罰だろうね』

「…つくづく、キミは不幸せ者だよ」

自分がこうして丈夫な体で生まれなかったことは別にどうだっていい
銃を持たず、人殺しを強要されなかったあの頃じゃない

ただ、普通の子どもになったっていいんだという…普通の幸せをブランカは与えてくれた

『幸せさ』

「…キミは…いや、やめておくよ」