ヤマネコが愛したライオン2 (ページ32)

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12話月の龍の時間ページ32

ー翌日ー

「やあ、エスタナ」

『ったく…朝っぱらから鬼電話するなよ』

「おや、口調がいつも通りだ。いいことだね」

いつもの車に乗ったブランカの助手席に回ると、「昨日のハロウィンパーティーはどうだった？」と聞いてきた

シートベルトを締めて『結構楽しめたよ』と答えるとブランカは、嬉しそうに「それはよかった」と言い車を走らせた

「ここだよ」

バンッと運転席のドアを閉めたブランカにならって、私も助手席から降りるとそこには普通の携帯ショップがあった

ブランカとともに中に入り、彼が店員と話しているのを横目に店内をうろつく
昔、スマホを手に入れるのはルカにしてもらったからこう言った店には入ったことがなかった

あったとしても、闇の方だし正規で手に入れるようなことは本当に少なかった
服を買うのも、ルカたちに用意してもらってたしなんならアッシュがクリスになってデートだと言って街の中を歩き回った時に買い漁ったぐらいだ

『………………』

思い出に浸りすぎるのもいけないのだろう
だけど、あの頃が1番楽しかった

生きていたいと、もっとみんなと一緒にいたいと思えるほど幸せで幸福だった
英二とアッシュが普通に話して笑っている、こんな幸せなことが他にないこれ以上ないと思えた

「エスタナ、なにか気にいるものがあったのかな？」

『特に何も？』

「なら、向かいのカフェで待っていてくれるかな？」

『OK、兄さん。早く済ませてね』

携帯ショップを後にし、信号を渡って向かいのカフェに入りコーヒーを注文する
カウンター席ではなく、窓のそばのボックス席だ

文庫本でも持ってくればよかったな。と思っていると、テーブルの上に2、3冊の本が置かれていた
ご自由にお読みください。と言う言葉通り、周りの客も本を手に取っている

なるほど、退屈な人間を出さないための配慮か。合理的でいい
このカフェに通うことになりそうだ

手に取った本は、サリンジャーの本だった
適当なページから読み進めていると、ふと影が刺した
ブランカだろうと顔を上げず読む手を止めずに声を出す

『兄さん、来たなら声ぐらい…』

本から顔を上げてみると、目の前には男女を魅了する顔を持った男が立っていた