ヤマネコが愛したライオン2 (ページ30)

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ハンカチを取り出してサラサラとペンで書いた後、『はい』とドアマンに手渡すと、彼は「ありがとうございます」と頭を下げた

「エスタナ、そろそろ行くぞ」

『あ、うん』

小さくドアマンに頭を下げた後、私はそのままアッシュを追いかけてエレベーターに乗り込んだ
私のファンだと言ってもらえて嬉しい反面、昔のことを覚えているこちらの身としては、少し嫌と感じる

「エスタナ、早く」

『あ、うん』

エレベーターを降りた後、アッシュと英二の住む部屋に向かう
今でも2人がルームシェアをしていると思うと本当に嬉しい限りだ

アッシュに案内されて中に入ると、リビングにはオレンジ色のジャック・オ・ランタンが所狭しと飾られていた

もちろん、犯人はあの2人だろう

「なっ…!?」

『わあ…』

「「おかえり、アッシュ！」」

料理や飲み物をテーブルに並べて狼男の仮装、フランケンシュタインの仮装、お化けの仮装をした英二、ショーター、シンが声を揃えて言うと、アッシュは顔を真っ青にした

「な、なんだこのカボチャの山は!!!」

「だって今日はハロウィンだろ？」

「まだこんなに陽が高いんだぞ!?」

「まあまあ、そう言うなよ」

『わあ、パンプキンパイにターキーまである』

「うん。お隣の人とひとつ下の階の人がくれたんだ」

(マダムキラー)

昔と同じく、英二はどうやら近所の人間と付き合いがあるらしい
アッシュは、「お前、近所のやつと付き合いまであるのか!?」と壁に背中を貼り付けている

ルカはあの恐ろしいアッシュ・リンクスの変わり身に驚き、口元に手を当てて指をさしこちらを見ている
そうだよ、あんたが怖いって言ったあのアッシュだよ

「下のスーパーでしょっちゅう顔を合わせてりゃ、そりゃ顔も知るよ」

「それ以上近づけたら泣くぞっ!?」

(どっかで聞いたなあ)

英二がジャック・オ・ランタンをシンと共に被ってアッシュに詰め寄っていけば、アッシュはさらに怯えて顔を青くした

「「トラック・オア・トリート!!」」

「はははっ！シン、悪ノリだな〜！」

「はははっ！」

「怖〜命知らずだろ…」

俺は絶対無理。と頭を抱えたルカに、私は『ハハハ…』と苦笑いした