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バタンとドアを閉めて鍵をかけ、そのままズルズルともたれた
着ていた服を全て脱ぎ捨ててシャワールームに入ってありったけの蛇口をひねって水を出した
冷たい水から温かい水に変わっていく中、ずっと浴び続ける
水道代とか、光熱費とか、そんなの関係なく頭から水をぶっかけた
忌々しい、忘れたいあの記憶が頭の中に溢れ出てきた
10の時に拾われて、それからディノの愛玩具として、クラブ・コッドで娼婦として働かされて、やっと出会えた、愛する人との愛を手に入れて…
7年も離れた、でもそれでも彼は私を愛して待ってくれていた
私が数多の男に抱かれても、彼は私を愛してくれた
綺麗だと、美しいと、男たちに言われても嬉しくもなんともない自分の価値を決めつけられた言葉を、彼は…アッシュは…
“綺麗だよ”
“かわいい”
“俺のだ”
同じ言葉なのに、同じ言葉なのに彼の言葉は綺麗だった
私を思い、いつまでも隣にいてくれた彼は…また私を守ってくれた
助けてくれた
だけど、私はもう“汚れた”
『ゔ…あ"ぁっ…あ"あ"あ"っ…あぁっ…』
怖い、恐ろしい、この穢れた体が
汚い、消したい、この汚ない体を
もう彼の前には立てない
もう二度と、自分の思いを彼に伝えることはできない
ー翌日ー
『…………………』
あの頃のことが懐かしくなって、ニューヨークのダウンタウンを訪れた
今となっちゃ、私は一般人でか弱な小鳥で、カッコウのカモだろう
『ははははっ…馬鹿みたいだ…こんなところに来たって、意味がないのに…あの頃に、戻れるわけでもないのに…………………』
ダウンタウンの奥にひっそりと佇んでいる建物を見つめる
ここでアッシュとやんちゃした、ここでショーターたちとくだらないことを言い合った
みんなで、英二と、共に過ごした思い出の場所、ニューヨーク、ダウンタウン
『4年か…いや、あっという間か』
その4年で、アッシュと、英二と、みんなと、最後の思い出を作って私はロシアに帰る
もう二度とニューヨークに、アメリカには来ない
『さよなら、レオン・クラウン
さよなら、アッシュ・リンクス…私の大切な人…愛しい人』
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作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2021年6月28日 17時
