ヤマネコが愛したライオン2 (ページ19)

今日:5 hit、昨日:6 hit、合計:6,814 hit

9-3 ページ19

アッシュside

大通りを意味もなく走り続けていると、カシャーンと路地裏からスマホが滑り落ちてきた
カツンと電灯の近くに当たると、《エスタナ！》というルカの声と英二の声が聞こえてきた

エスタナのスマホだ

「ルカか!?」

《うおっ、アッシュ!? エスタナ見つけたのか!?》

「いや、見つけて…」

そうだ、このスマホはどこから来た？
確か、路地裏の方から…

俺がゆっくりと路地裏を振り返れば、金髪のライトブルーの瞳を持った女の子と、そんな女の子を拘束して迫ろうとしている男がいた

その光景は、昔に見たレオンと重なった

「エスタナ!!!」

路地裏に入り、俺の声に驚いたエスタナと男は俺をじっと見つめている
エスタナは目を見開いた後、ボロボロと涙を流していた

カッとなった俺はそのまま男を殴り飛ばし、気絶させた後急いで自分のパーカーを脱いでエスタナの肩にかけてキツく抱きしめた

「すまない、遅くなって…！」

存在を確かめるようにきつく抱きしめると、エスタナは子どものように泣きじゃくった
大きな声で、大粒の涙を流して

その後、ルカが呼んだ警察が男を連れていった
エスタナに事情を聞くためにパトカーに乗せようとしたチャーリーを見て、『うげっ…』とエスタナが顔を歪めた

「おいおい、あのおぼっちゃま、まぁた警官やってんのかよ…」

『………はぁ…』

「…俺を知ってるのか？えっと、ロシアの天使さん」

『…………ごめんなさい、警察には…行きたくないわ』

「え、あ、じゃあ車の中で話だけでも」

『……』

「あ、悪い…エスタナは車とかそういうの無理なんだ…できれば、ここで済ましてやってほしい」

「あ、あぁ…」

チャーリーの車にすら乗り込む気もないらしく、ずっとエスタナは震える手を包み込みながら視線を下に向けていた

エスタナがぽつりぽつりと話をしている間、ルカはずっと隣に立ち、俺と英二は少し離れた場所で様子を見ていた

話が済んだのか、チャーリーは「送ろうか？」とエスタナに聞くと本人はブンブンと顔を横に振った

「エスタナ、車に何か嫌な思い出でもあるのかな？」

「…………」

「アッシュ？」