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「エスタナ、大丈夫か？」
『え？』
「なんか、顔つき」
『あ、ごめんなさい。なんでもないの』
強く握った拳から力を抜き、12階についた合図を鳴らす音とエレベーターのドアが開いてアッシュが歩いて行くのを追いかける
やはり、昔と同じ部屋に住んでいるらしい
「すぐ取ってくるから、中で待っててくれ」
『外で待ってるよ？』
「ダメだ。危ないから中で待っててくれ」
『…女の子を部屋によく上げるの？』
「……いや、ないけど」
『なら、あまりそういうのはよくないわ。初めて人を家にあげるのなら、好きな人か友達にしなきゃ』
「いや、その…だから…」
『？』
「半分、ルームメイトと暮らしてるんだよ…英二と」
『えっ…』
アッシュが言いにくそうに言う中、私は固まった
また、ここに英二と住んでる？
私はそれだけ聞くと、鼻の奥がツンと痛くなった
大切な人と友達がまたこの部屋で笑い合いながら住んでいる
『幸せだなぁ…』
「え？」
銃も殺しもない、アッシュと英二のそんな幸せな空間が今この部屋の中にある
たったそれだけの事実がたまらなく嬉しかった
『なら、尚更あがれないわ。英二の生活もあるもの』
「…英二なら、喜んでくれる」
『…ほら、急ぎのものなんでしょ？早く取りに行かなきゃ』
「……」
アッシュは渋々、苦い顔をしながら部屋に入った
私はドアの近くに背を預けて静かに待つことにした
ドタバタという足音が聞こえて、バターン！というドアの開閉音が廊下に響いた
パチクリと目を瞬かせていると「エスタナ！」と英二がぱぁあっ！と顔を明るくさせてこちらに駆け寄ってくる
「こんなところで待つなんてダメじゃないか！さ、中に入って！」
『で、でも…』
「アッシュの奴、探し物に手間取ってるんだ。大丈夫、何もしないよ、危害も加えない
怖いんなら、僕と一緒にスーパーに行かないかい？」
昔と変わらない笑顔の英二に、胸が暖かくなった
英二とスーパーで買い物、悪くない
『英二がいいのなら…』
「もちろんだよ！アッシュ！アーーッシュ！」
「なんだよ、英二」
「僕、エスタナとスーパーに行ってくるねー！キミは早く探し物を見つけてくれ！」
「は!? 俺も行きてえ！」
「探し物を探すんだ！」
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作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2021年6月28日 17時
