もう1人の正統継承者【男主】 (ページ4)

今日:4 hit、昨日:2 hit、合計:14,644 hit

0-2 ページ4

(1分…)

いまだにカタカタ揺れているものの、集中している良守を邪魔しないように静かに見守っていると、道場の引き戸を開けるじいちゃんが現れた

「良守」

『！』

「昨晩は見事妖を仕留め、殊勲をあげたこと何よりじゃった！」

『じいちゃん、今鍛錬してるから後にしろよ』

俺がため息混じりで言ってもじいちゃんは、まだ口を動かし、今月に入ってからまだ2匹目とかぶつくさ文句を言う

別にいいだろ…俺だって良守の歳の頃はそんなもんだったし

「ところで、お前のランドセルからこのような物が出てきた」

じいちゃんは、懐から取り出した紙に目を通し、ツラツラと読み始めた

好きな教科は図工

好きな給食はコーヒー牛乳

今学期の目標は忘れ物をしない

夏休み1番の思い出は近所の友達と兄ちゃんと花火をしたこと

「お前、夜に遊んどるヒマないじゃろう
まさか…この友達とは雪村の娘のことではあるまいな？」

ｸﾞﾗｯ

『あ』

良守の結界がグラッと揺れ、バケツの水が俺にぶっかかった
おかげさまでびしょ濡れになった俺はじいちゃんの怒号を聞きながらストップウォッチを止めた

2分半か…まあ上出来だな

じいちゃんが良守に対してガミガミと説教垂れている
俺はその近くでその説教が終わるのを待ちながら、自分の右手にある正方形の方印を見つめた

「方印」とは、間流結界術の正統継承者の証らしい
だから、俺と良守は夜の学校・烏森を守っているのだ

「兄ちゃん…」

『…空気吸いに行くか？』

「いく」

グスッと泣いている良守の頭を撫でながら手を繋いで裏に周り、椅子に座ってタオルで頭を拭き、濡れた道着を脱ぎ捨てた

「兄ちゃん…もうこんな生活やだよ」

『俺もだよ。…遊びには行けねぇし、勉強はしなきゃなんねぇし…』

良守の気持ちわよくわかる
まだ9歳で方印が出てしまったせいで、夜の学校を守ることになっているんだ

かわいそうったりゃありゃしねえ

まだべそかいている良守を撫で回していると、「また泣いてる」というお隣さんの立派な木の枝に乗っかっているポニーテールの女の子がからかい始める

「そんなにイヤならやめちゃえば？」

「時音…」