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「娘が生まれた時は、嬉しかったなあ…」
『…その子は今どうしてるんだ?』
「え?
どうしてるだろう…気づいたらここにいたから」
『その子に会いたいか?』
「ええっ!? そりゃ昔懐いてたし、私の選んだ筆箱も喜んで使ってくれてましたが…中学に入ってからは何故か口も聞いてくれなくて」
『そんなことはいいんだ。あんたは、娘さんに会いたいのか?会いたくないのか?』
シンプルな疑問を投げ掛ければ、男は、「会いたい、です」と答えた
俺は小さくため息を吐いた後、『よし』とポケットから手帳を取り出しページをめくっていく
『ここに行けばいい
詳しい人が相談に乗ってくれるから、娘に会いたいと言えばいい
それからここには二度とくるな、近づくな
次はこの上ない苦痛と共に一点の光もない暗闇へ葬り去ることになる
わかったら早く行け』
「は、はい!」
逃げるように行ってしまった霊に俺はほっと一息ついた
「甘いね。あんな後ろ向きな人、またすぐに悪化するよ
ま、消さずにすんでよかったんじゃない?」
『………』
「いやーびっくりしたわ!
キミ、いきなり凄むし相手吹っ飛ばすし、ホンマ怖い人なんかと思うたわー!!」
『あぁ…まあ、俺もこんなナリしてるし…ガキの頃から暗いだの言われてたからな…
あの人まともに説得できる気がしなかったし、病んでたからな…
リストラとかも俺はされたこともないし、あのままじゃ戻れなくなってたから…それに、俺だってああいうのはよくわかるんだよ
後ろ向きな手のかかる弟がいたもんでな』
「んなっ!? それは俺のことか!? 俺のことなんだな!?」
良守がギャンギャン言いながら言うもんだから、俺は『あー、うるせー…』と耳を塞ぎながら歩いていく
俺だって馬鹿みたいに後ろ向きだってことぐらいあるよ
俺だって才能が欲しかった…良守みたいに、あんな風に無茶しても大丈夫なように、なりたかったんだ
ー数日後ー
『ただいまー』
コンビニで簡単なジュースとお菓子、雑誌を買って帰ってきた俺の声を被せるような「悪・霊・退・散ーー!!」というじいちゃんの叫び声と、ドガッシャーンだの、ビキイィ、だの、バキャッバキャッだの色んな音が渦巻いた
『うちの家には、休息がいつくるんだ?』
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作者名:サッカーバカ | 作成日時:2021年6月18日 11時