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レオンside
『…………』
「レオン?」
『え?』
「どうかしたの?」
『あ…ううん、なんでも』
「アッシュと何かあった?」
バサバサッ
『………』
「あったんだね…」
『………英二には嘘がつけないな…』
取りこぼしたトランプを寄せ集めると、英二は「なんで喧嘩したの?」と聞いてきた
トランプをそのままシャッフルしながら、『ユージンのことでね、ちょっとぶつかっちゃって』と手を止める
『ユージンのことは好きだった
だけど、お兄ちゃんみたいに思ってたから、好きな人と履き違えたんだ…
それに気づいたのは、アッシュと一緒にいるようになったからなんだけどね…』
「じゃあ今は」
『…アッシュ以外、愛せないよ』
「………」
『でも、アッシュが迷惑だと言うなら私はもうアッシュのそばにはいないよ』
「どうして?」
『…アッシュがそう望むなら、手を引くのが普通だし…アッシュには、幸せになってほしいから
私もユージンのことを忘れなかったこともあるから』
「忘れちゃダメだよ」
『…え?』
天井を見上げながら言えば、英二は「忘れちゃダメだよ」と二度同じことを言った
「…忘れちゃダメだよ。それが大切な思い出で、レオンにとって大切な人なら…なおさらね」
『英二…』
「人は死んだら、人の思い出の中でしか生きられない…人に忘れられた時が、本当にその人の死なんだよ」
『……………でも、忘れないと』
「アッシュならきっとわかってくれるよ。レオンの大切な人をアッシュもきっと…
だから、忘れちゃダメだよ。レオンが忘れたら本当にユージンは死んじゃうよ」
ユージンが、本当に死ぬ…
忘れちゃダメ、その言葉が頭の中で深く刻み込まれるような気がした
『そうだね…忘れちゃ、ダメだね…。ありがとう、英二、私…ユージンを殺すところだった』
「あ、いや…」
『…アッシュにはちゃんと謝るよ』
「うん」
トランプをケースにしまうと、「レオン、いいか?」とショーターが声をかけてきた
いつものような調子ではなく、いつになく真剣な声色
『うん…。またね、英二』
「うん」
テラスに向かうと、ショーターは椅子に腰掛け私は手すりにもたれた
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作者名:サッカーバカ | 作成日時:2021年6月5日 11時