元殺し屋はヒーローになる19 (ページ31)

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136話幸せの崩壊ページ31

「で、アッシュ…いつまでいじけてるつもりだい？」

「……………」

「彼女が帰国する時は笑って見送るんだぞ？」

青子の帰国が迫った
このアメリカに来て約2、3ヶ月が経ったらしい
青子は、『は？戻ったら速攻のインターン？ふざけてんの？やるけど』と真顔で答えていた

2月中旬、ジャケットを着て寒さに耐えていれば、青子が優しくマフラーを貸してくれる
青子の匂いがするマフラーに顔を埋めながら、ぶすくれて青子と一緒にいる

『あのね、私だって好きで帰るんじゃないよ？
こっちには、インターンできたの。わかる？インターン』

「わかってる。でも、戻ったら会えなくなるだろ？
ヒーローになるのに、毎日忙しいって聞いた」

『うん、忙しいよ。アメリカ行く時間ないもん』

「ほら」

『手紙ぐらい書いてくれればいいよ』

「…住所教えろよ」

『雄英の住所調べれば早いよ』

ほれ、と青子はスマホの画面に雄英のホームページを出した
ご丁寧に色々と教えてくれるもんだからあっさりしてやがると俺は睨んでおいた

俺はもうアメリカに永住していて欲しい
というか、早く18になれば結婚したらいいんじゃないか？

ピキーンと明暗が浮かぶ中、『なんか変なこと考えてない？』と聞かれて俺は全力で首を横に振った

『ねえ、アッシュ。アッシュの誕生日教えてよ』

「え？」

『誕生日の日に届くようにプレゼント贈ってあげるからさ。それに、アッシュに少しでも幸せを感じて欲しいからさ』

「…いいけど、悪用するなよ？」

『未来のヒーローになんてこと言ってんの』

「はは、嘘だよ。俺の誕生日は」

俺が自分の誕生日を伝えようとすると、ふと影がさした
俺は上を見上げると、建設中の工事現場の足場から鉄骨がグラグラとしているのが見えた

グラっと大きく揺れた鉄骨に「あ」と小さく呟くと青子は『どうしたの？』とつられて上を見上げると美しいサファイアの瞳を大きく見開いた

たった一瞬だった

俺の先を歩く青子が、俺の元に駆け寄ってくる

スローモーションに見えた

鉄骨が落ちてくるのも、青子が俺の方に走ってくるのも

『アッシュ!!!』

そうだよ、わかってた

青子は…“そういう奴だ(・・・・・・)”

ｶﾞｼｬｧｧｱｧｧｧｧｧｱｧｧｧﾝ!!!!!!!!!

俺の幸せが、一気に崩れ落ちた