大王女様と山猫小僧2 (ページ50)

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アッシュの鋭い眼光と、伊部さんの哀れむような視線が混じり合う中、私は『風強いなー』なんて関係のないことを日本語でぼやいた

「俺たちの国では、自分の身を守るために銃を持つ習慣はないんだ！」

「あいにくここは日本じゃない
誰かがあんたに銃を突きつけた時、そのセリフが通用するか試してみるんだな」

柵の上におかれた撃ち損ねた最後の瓶を撃ち飛ばしたアッシュは、腰に銃をさして歩いていく
飛び散った瓶の中身の酒の匂いが風に乗って漂ってくる

『……アッシュ・リンクス、か…』

灰色の山猫…どっちかっていうと、金色のヤマネコの方がしっくりくるけど、なんで灰色なんだろう

まあ、どうでもいいや
白樺さんには関係ないもんね

「あ、白樺さん。朝ご飯どうする？」

『ガッツリ食べたい！』

「デブるよ？」

『失礼だな。私は太らない体質なんだよ』

「全世界の女の子に謝ったら？」

『食べても消化するんだよッ』

出されたご飯を食べ進めていると、「瑞姫、浅野くんから電話きたんだけど」と言われた
日本今何時だよ。夜8時あたり？まじで？

「なんか怒ってる」

『なんで???』

スマホを手渡されて『はい、白樺さんでーす☆』というノリで電話に出ると、《ふざけたこと言ってないで何か僕に言うことはないのかい？》というドスの効いた声が聞こえてきた

『言うことって言われてもないと思うんだけど』

《赤羽から聞いたぞ。金髪のいたいけな年下の男の子をたらしこんだとか》

『発端てめェじゃねぇか、中二半てめぇー!!!』

バフンッとカルマにクッションを投げつけるのと同時に『なんでそんな風に言うの!? 白樺さん、ショック!!』というと、《日本の時間何時かわかっているか？》と怒ってきた。理不尽だ

『大体、いたいけでもなんでもないし。性格クソ生意気なクソガキだし』

《お前に似てるのか？》

「瑞姫に似てるもんね」

『誰がこんなクソガキと似てるんだよッ』

「？」

問題の中に放り込まれているアッシュ本人は、訝しげに眉を寄せてこちらを見ている
どういうことだよ、アッシュのどこをどう見たらいたいけな男の子なの？

『いじめられてるの白樺さんだもーーーーんッ』

《うるさい》

『ごめんなさいッ！』