天使と悪魔の方程式 2【男主】 (ページ41)

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16話反逆の時間ページ41

ーその日の晩ー

「クラブ・コッド？」

「魚料理の店さ」

『……………』

「ゴルツィネが、わざわざ魚食いに来るのか？」

ショーターがそう聞くと、アッシュは首を横に振った

「食わせるのは魚だけじゃない。別の生き物も売るんだ、人間をな」

「人間…」

「そこはディノの経営する店で、趣味と実益を兼ねた秘密クラブなのさ
商品は主に子ども。客は大抵、社会的地位のある連中ばかり
だから当然秘密厳守だ。その分ディノは連中の弱みを握れることになる」

「…ちっ、ヘドが出るぜ」

「うえぇ………」

ショーターとキルトが眉を寄せているのと、奥村も表情を暗くさせる

「奴は商品の供給源として、俺みたいに家出してフラついてるガキを捕まえる
子どもは逃げられないように麻薬漬けにされて、2、3年しか生きられない
それだけ秘密が守られるってわけさ」

「ひどすぎる……」

『……』

「で、奴がそこへ…？」

「そうだ。決まって毎月15日にな」

話は終わって部屋に戻り、みんなが寝静まった後に俺は起き上がった
同じベッドの上でスヤスヤと眠る奥村を見た後、くしゃりと柔らかい髪に触れて起こさないようにベッドから降りた

昼間にいた屋根にのぼり、満点の夜空とは言わないけど輝く星と月を見上げた

『…あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む』

おばあちゃんがよく正月になると百人一首を取り出して意味を一つ一つ教えてくれた
いろんな人の思いがこうして形に残ることは素晴らしいことだと言っていた

じゃあ、お父さんやお母さん、兄ちゃんの思いは？
形に残るようなものなんてもうどこにもない

俺は…一体これから、なんのために生きればいい

ー2日後ー

「朝から…眠い」

「頑張れ、キルト〜」

朝からアッシュたちはクラブ・コッドの店を偵察するために店の向かいにあるビルの屋上に来ていた

俺はいつものように帽子をかぶって日陰にいる
今日向に出ると、ちょっとしんどい

「見てくれはなんてことないレストランだから、誰にも目をつけられない
この日は最小限の腹心しか連れてこないんだ
怖いお兄さん方にうろうろされちゃ、客の手前があるからな」